梅ちゃん

アンダードッグ 後編の梅ちゃんのレビュー・感想・評価

アンダードッグ 後編(2020年製作の映画)
4.2
underdog
不利な状況にあって、負ける事を期待されている者たちの物語。
後編。

疾うにピークを過ぎたロートルボクサー末永晃。(演:森山未來)
新進気鋭の新人ボクサー、大村龍太。(演:北村匠海)
2人の直接対決までの心の軌跡が描かれる。

前編で大いに涙を誘った、芸人ボクサー宮木瞬の出番、今回はほぼ無し。残念。(演:勝地涼)

デビュー以降KOの山を築き、幼なじみの妻との間に子をもうけ、公私ともに最高の日々を謳歌する龍太。
しかし半グレ時代の過ちが、清算を求めてその身に跳ね返る。

間違えたっていい。
逃げたってまあいいだろう。
剣士じゃないんだから、背中の傷だって多少であれば許容範囲だ。

ただし、人生には絶対に退いてはいけない瞬間がある。
苦かろうが何だろうが、それまでの全てを呑み込み、やせ我慢してでも向き合って行かなければならない時がある。

晃と龍太にとって、二人の試合はまさにそれであった。
大小あれど誰にだってそういった経験があるでしょう。
だからこそこの物語に共感し、心が揺さぶられる。

クライマックスの試合シーンは圧巻。
あまりの臨場感と迫力に息を呑み、二人が戦う姿を固唾を呑んで見守ることしかできない。

どちらが勝者とかはどうでもいい。この場に立ったことに意義があるのだから。

エンドロール、爽やかに晴れ渡る河川敷を力強く、どこまでも真っ直ぐに走ってゆく晃の後ろ姿。
その道が明るい明日に繋がっていることを思わせる希望に満ちたラストシーン。

あの背中は自分か。
そうありたいと心から願った。