蒼烏賊

スカイライン −逆襲−の蒼烏賊のレビュー・感想・評価

スカイライン −逆襲−(2020年製作の映画)
3.0
TIFFで世界最速で鑑賞。
血湧き肉躍る最強エンタメ映画スカイライン奪還の続編として、他のSF大作でもなし得なかった"エイリアンの母星へのカチコミ(?)"を成し遂げるスカイラインサーガ最終作だ!!!と期待を抱いて先行上映に望んだ結果、お出しされたのは前作を上回る珍味を濃縮した珍味作品だった………!

映画の全体的な評価としては、『奪還』程のインパクトは無いが、楽しく観れる愛すべきB級映画といったところ。また、上映前の監督とキャストによるビデオで、ヤヤン兄貴の「監督から続編のオファーが来た時、彼に『前作で死んだ筈だ』と答えたが、『いや、問題ない』と返してきた」のコメントでスクリーンが笑いに包まれたのも良かった。そしてローズ役の人がさらっと作品のネタバレをしてたのも笑った。いやダメでしょ…

ネタバレになってしまうので詳しくは言わないが、ストーリー自体は結構ふわふわで物足りない節もある。しかし、前作で大活躍をしたトレントのエイリアンとしての成長物語と捉えるとそこそこ合点も行く。トレントだけでなく、エイリアン(作中ではダブリン?とかそこらの名称で呼んでた気がする)のコミカルな演出は、今作の評価すべきポイントだ。ラストのバトルシーンは圧巻だった。元々人間の脳味噌使ってるわけだから当たり前なんだけど、イキイキと規制音入りまくりのジョークを飛ばしたり、小言言ったり、人間と同じように部屋で作業をしたり、4つあるお目目をパチクリウルウルさせたりと、人間以上に人間味が出ていた描写が非常に面白い。そう考えると、征服から奪還でエイリアンのデザインを大幅に変更したのは英断だったと言える。今作新登場のステルスエイリアンや親玉のデザインもなかなかに良かった。

ただ、全2作よりも予算が抑えられている(気がする)ので仕方が無いとはいえ、俳優力(はいゆうぢから)によるインパクトがイマイチ足りなかったのが惜しいポイント。前作のグリロ兄貴とザ・レイド組のキャスティングは良かったのだなあ…としみじみ思うが、その反面アクション面でのキレは前作に劣らず健在だった。というかリアム監督、『奪還』の燃えるポイントが今作『逆襲』に大して受け継がれていなかったりする所を見る限りだと、ぶっちゃけSFに対しての拘りよりもアクションに対しての拘りの方が強いし、なんなら純粋なアクション映画とか撮ってた方が才能が輝くのでは!?と思う次第だ。そんな彼の手腕が惜しみなく発揮されるのが今作最大の見所の1つであるエイリアンサイボーグヤヤンルヒアン無双なのだが、これはもう本編を観た人でないと味わえない絵面の"強さ"があった。もうヤヤンルヒアンしか勝たん!

結果的にそこまで逆襲してないしカチコミというわけでもないじゃん!と突っこみも満載かつ、終盤でいきなりゴア描写が増えたりとガバガバな所も多くあるが、それもこの作品の1つの味である。大口叩いて「今度は攻めに行くぜ!」なんて啖呵切っても、作品自体が振るわずに続編が頓挫したら元も子もない。その反面、さほど大規模ではないにしろそのフットワークの軽さでどんな形であれ続編を生み出し、3作品でスカイラインサーガを書き切ったことにこそ意義があり、評価すべきことだと自分は思う。コバルトワンへの旅、悪くなかった。監督には是非サイボーグヤヤンが主役のスピンオフを作ってもらいたいと思う。ちゃんと劇場公開したらまた観に行きたい。
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