ブラックユーモアホフマン

あの夏のルカのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

あの夏のルカ(2021年製作の映画)
4.7
やっぱピクサー。
なんだろうかこのセンスの良さは。

『ソウルフル・ワールド』は一回飛ばしてこちらから。
『2分の1の魔法』はそこまで面白く観られなかったけど、それでもダン・スキャンロン然り今回のエンリコ・カサローザ然り、作家がパーソナルな物語を描き、作風もそれぞれの個性を際立たせていて、それがピクサー映画のセンスの良さに繋がっているんだろうか。

エンリコ・カサローザ、『月と少年』にあった要素全部そのままだったな。月と星と少年と海と船。キャラクターのデザインも同じ。大勢関わってるのに作家性を尊重する姿勢が素晴らしい。

いいアニメーションだったな〜。3DCGなのにクレイアニメみたいな質感で『ぼくの名前はズッキーニ』とかを思い出した。ライカはストップモーションなのにフルCGに見えるから全く逆。

でもそれだけじゃないんだよな。映画がなんたるか、アニメーションがなんたるかをよく分かってるなあ〜と思うんだよな。それが何かって言語化が難しいけど。

いきなりマリア・カラスから始まるなんて。音楽は元々、エンニオ・モリコーネが作る予定だったんだってねぇ〜ピクサー映画の作曲にモリコーネなんて最高だっただろうなあ……と思いつつ、逝去されたのでダン・ローマーって人にバトンタッチ。
『ビースト・オブ・ノー・ネーション』とか『ハッシュパピー バスタブ島の少女』とかの人らしい。なるほど確かにどちらも暑いところが舞台の”こども映画”だしぴったりかも。

内容自体は色んな映画の良いとこどりなところもあって、陸を恐れてて親が過保護なところは『ファインディング・ニモ』だし、陸の世界に憧れるのは『リトル・マーメイド』だし、外の世界について教えてくれる兄ちゃんと出会うのは『ライオン・キング』。星が何か、間違った情報を教えてくれるのもティモンと同じ。最後2人で自転車に乗るところは『トイ・ストーリー』のクライマックスのリフレイン。

『アクアマン』にもこんな場所出てきたな。ブラックマンタに襲撃されるところ。人間たちはシー・モンスターって多分『アクアマン』のトレンチみたいなやつだと思ってるんだろ。どちらもまたしてもラブクラフト感ある。
イタリアが舞台だからか『君の名前で僕を呼んで』を思い出したりもしたけど、何よりこの前観たパウロ・ローシャの『青い年』の感想にも書いたけど、ヌーヴェル・ヴァーグの瑞々しい青春映画の雰囲気をこの映画にも感じた。

とにかくセンスが良かった。やっぱピクサーだ。

ちなみに字幕版で観ました。ジェイコブ・トレンブレイもジャック・ディラン・グレイザーも当然ぴったり。マーヤ・ルドルフのキャスティングは『プールサイド・デイズ』も思い出すな、なんて思ったけどやっぱサシャ・バロン・コーエン演じるウーゴ叔父さんが最高でした。そういえば今回ジョン・ラッツェンバーガー出てなくないか!!??

東京ディズニーシーは早急に『あの夏のルカ』関連の何かしらをメディテレーニアンハーバーに作りなさい!

【一番好きなシーン】
ヴェスパに乗って月まで行く妄想するシーン。一番泣けた。