スギノイチ

阿片台地 地獄部隊突撃せよのスギノイチのレビュー・感想・評価

4.0
安藤昇率いる無骨な集団が八路軍に襲撃を受ける所から始まり、やがて「地獄部隊」と呼ばれる刑務所と前線を兼ね備えた部隊へ拾われる。
かつての上官の陰謀や南原宏治演じる鬼教官のシゴキが襲い掛かるのだが、他の軍隊モノ映画と違い、安藤昇は最初から「無敵モード」であるため、武力や博打や人心掌握においても最恐状態で班長にまで上り詰める。
気に入らない物は敵でも味方でも「打ちのめし尽くす」。
もはや荒唐無稽でもある。
だが、そこには『兵隊やくざ』や『独立愚連隊』ではたどり着けない、この反則作品ならではのカタルシスがある。

宿舎の兵隊達は皆キャラが立っているし、この手の映画にありがちな上官との対立構造を踏まえたうえで、さらなる巨悪(佐々木孝丸)への闘争に昇華していくドラマ構成も小気味良い。
喜劇パートもハズレが無く、「笑ってはいけない大宴会」などは、安藤昇の仏頂面とのミスマッチも相まって最高に笑えるシーンだ。
こんな楽しい映画だが、致命的な欠点がある。それはペギー・潘演じるヒロインだ。
とにかく演技がド下手な上に、物語上に全く邪魔だからだ。

『映画俳優・安藤昇』によると、ペギー・潘は碌に日本語も判らぬまま演技していたらしく台詞もたどたどしい。
味があると言えば味があるが、やはり魂無き演技に光る物は無く、ほとんどのシーンはノイズである。
本来の脚本的には、無敵である安藤昇の人間性を際立たせる役割を持っているのだろうが、その辺の嵌合が凄まじく悪いことがこの映画の価値を不当に下げてしまっている点だろう。
あの辺をもっとうまく潤滑することが出来たら、『兵隊やくざ』のみならず『第十七捕虜収容所』や『大いなる幻影』に迫れる素材だったのに。
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