ヴィクトリー下村

兎たちの暴走のヴィクトリー下村のレビュー・感想・評価

兎たちの暴走(2020年製作の映画)
4.2
東京国際映画祭で鑑賞以来の2度目の鑑賞。
大好きな作品だったのでもう1度観れたこと自体が嬉しい。
配給がアップリンクということで思うところはあるが、この作品を配給してくれたことは感謝したい。

物語は中国で実際に起きた誘拐事件を題材にしている。
ジャンルとしては犯罪映画になるんだろうけど、事件に至るまでの登場人物の心情ややり取りが切なすぎて青春映画としての要素の方が強いと思う。
そして、そこが自分が本作を好きな理由でもある。

主人公と友人2人の関係性が特に好き。
3人とも全員親に問題があるという悲しい共通点がある。全くタイプの異なる3人が親友になったのもそうした背景があるように思える。

トンネル前での告白での場面でジン・シーが涙を流している場面はやはりグッとくる。放送室での場面といい、家庭環境が描かれてないジン・シーだが彼女もかなり精神的に追い詰められてたのではないだろう。

行き当たりばったりの誘拐計画が上手くいく訳もなく、観てて辛すぎるほど事態は悪化していく。

兎は確かに暴走した。
だが兎を暴走させたのは誰なのか?映画は事件の背後にある「両親=大人」の責任も浮かび上がらせる。

映画を振り返ると「最悪」な事態は偶然ではなく必然的に起きている。

ユエユエの父親が束縛も暴力もしない大人だったら?
シュイ・チンも父親の過程に居場所があれば、違う選択肢があったのではないか?そんな痛烈なメッセージが胸に刺さる。

監督、これが長編デビュー作なの凄いな。次回作が気になる。