映画好きがなぜ映画を好きなのか、それを描いた物語だ。
映画鑑賞は一種の体験だ。
ごくたまに、自分とはまったく異なる性格や生い立ちをもつ人物に自分自身を見出だし、感情が大きく揺さぶられる感覚を覚える。そしてその感覚の根源を分析することで、考え方や行動原理にプラスの影響を及ぼすことがある。
また、映画鑑賞という体験のほか、歳や様々な経験を重ねることで、同じ映画であっても異なる点が見えるようになる。
これらの映画体験は、制作者たちの意図を正確に受け取れているかは別として、鑑賞する側その人だけのものだ。映画は制作者なしではできないが、鑑賞者なしでも成立し得ない。映画を作る人たちのものでもあるし、映画を観る人のものでもあるのだ。
作中で映画『MEISTER』が制作される。監督として抜擢されたジーンが、紆余曲折を経てもなお最後までこだわったポイントが、本作のラストで明かされる。映画が映画を観る人のものでもあることがよく表れているな、と思う。
（プロデューサー指示かもしれないが、そこを交渉で変えなかったことが重要）
