Keira

トゥルーノースのKeiraのレビュー・感想・評価

トゥルーノース(2020年製作の映画)
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2021年の夏頃に映画館にきていた作品でとても気になっていたのだけども、時間がなくて見ることができず、残念に思っていました。しかしある日、早くもNetflixに来ていることを知り、感激。これは絶対に観なければ!と力んで鑑賞しました。
めちゃくちゃ泣きました。
観てよかったと心から思いました。

「それでも生きていく。」
まさにこのコピーがこの映画を表していました。比較的自由な国でも、生きていくことの難しさには、ぶち当たると思います。もちろん北朝鮮の強制収容所は"過酷"という言葉では補いきれないほどの場所ですので比にはならないですが。
しかし、この言葉からは主人公ヨハン、妹のミヒ、母のユリが出口のない、本当の意味で生きることが許されない絶望的な環境で生きるために、一生懸命に希望を見出して生きることを諦めない真っ直ぐな姿勢が伺えます。単純に凄いなと…!
絶望的な状況で、生きることを肯定する…
ナチスドイツ時代のアウシュビッツで過ごした方が書いたMan’s search for meaning という本を思い出しました。


心に残った言葉のひとつですが、
主人公の母ユリが主人公に対して語った言葉です。
「誰が正しい、誰が間違っているのかを考えるのではなく、"誰になりたいのか"(どんな人になりたいのか)を考えなさい。」
どこにいても、誰にでも当てはまる大事な言葉で、痛烈でしたし普段の自分自身の生活の中で忘れたくない言葉になりました。

清水ハン栄治監督の作品作りが
「難しいけれど重要なことを、楽しく分かりやすく伝える」ということに忠実で、本作も、北朝鮮の強制収容という非常に深刻な問題が描かれたものであったものの、主人公を取り巻く家族、友情などの人間関係にフォーカスしてあり、観客にとって見やすいものになっていたと思います。
またバイオレンスなシーンもアニメーションによって比較的見る側に心理的ダメージを与えないようなソフトな感じになっていると感じました。(暴力自体は絶対に許されるものではないですが)

ぜひもっと多くの人に見てほしいです。
この映画を通して世界が変わる、世界を変えたいと思いました。



少し具体的な内容に触れると、
主人公ヨハンが、収容所での卑劣な扱いを日常的に受け続け、だんだん卑屈になっていくところが見ていてとても悲しくて悔しくて涙が止まりませんでした。しかしヨハンが妹や友達の力を借りて、打ち勝つところを見ることができて本当に救われた気持ちになりました。彼らほど強く自分は生きられるのだろうかと考えながら、彼らの強さと優しさは肯定したいですが、同時にこんな著しい人権侵害が行われている場所は早くなくなってほしいし、これからもそのような場所ができることは避けなければいけないと強く思いました。

余談ですが、この映画、日本とインドネシア(?)の合作なのですね!完全に英語圏で製作されたと思ってました。

最後に、この映画のタイトルには2つの意味があるそうで、ひとつは「北朝鮮で起こっている真実」。もうひとつは、「絶対的な羅針盤」を指す英語の慣用句で、"生きる"こと、"生きる意味"が込められているそうです。私自身は1つ目の意味しか知らなかったので、2つ目の意味を知ってますますこの映画が好きになりました。

繰り返しますが、本当にもっと多くの人に見てほしい作品です。
Keira

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