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女たちのEDDIEのレビュー・感想・評価

女たち(2021年製作の映画)
2.8
生きづらさ。40歳手前の女性、独身、定職なし、田舎暮らしの鬱屈さと母親の介護に翻弄される。
田舎こそ弱者がコロナに生活を奪われる模様をメタファー的に演出。現実を愁う。
台詞で語り過ぎない手法は好感が持てるがスッキリしない部分も多く不満も残る。

▼noteに考察・解説記事をUPしました。
https://note.com/yujiezaki_eddie/n/n0acd48136fbf

▼以下、レビューは投稿時そのままです。

ちょっと演出面の不満はありますが、倉科カナの一人演技のシーンは圧巻でした。
あと高畑淳子の半身不随の演技、篠原ゆき子演じる娘との関係の溝の作り方など圧倒的。高畑淳子は本作のMVP。
あとペルシャ人介護士田中マリアム役のサヘル・ローズも素晴らしかったです。

ただですね、本作少し期待値が高かったのもあり、やや残念だったんですよね。
私はあまり詳しくないのですが、内田伸輝監督って演出力には定評があるらしく。
その演出面が活きた部分もありながら、突っ込まざるを得ない部分もあり、目について雑念が入ってしまいました。

極め付けは倉科カナの一人演技のめちゃくちゃ大事なシーン。倉科カナは私がこれまで見てきた中でもベストとも思える素晴らしい演技をしていました。

冒頭も篠原ゆき子演じる美咲と香織の会話シーンなんですが、何を喋ってるのか全く聴こえず。
演出の意図としてセリフを拾わずとも、2人の仲良さがわかるようにしているとも取れましたが、撮影の距離感が俯瞰とかではなく結構2人をフォーカスしてるんですよね。
2人にあれだけ焦点を当てるのであれば何を話してるかとか聴かせてもらわないと違和感しかありません。

おそらく映画として、監督として伝えたかったことは「女の生きづらさ」だったと思うんです。
だけど、主人公の美咲がうまく社会に馴染めてない要因が家庭の部分に大きくあり、焦点がぼやけていたような気がします。
女性の映し方もちょっと価値観として古いかなぁと感じる部分もあり。
女性を主体とした作品にもかかわらず、監督が男だからとか無粋なこと言うつもりはありませんが、どれも描き方が中途半端。

香織が人生追い込まれた要因についても、観客の想像に委ねるのはいいんですが、最後の最後までスッキリとはせず。

篠原ゆき子は演技力には定評があると個人的には思っているんですが、本作ではあまり上手いと感じなかったのも高評価できなかった要因。
主役として彼女一人ではお客さんを呼べなかったのもあるかもしれません。だから倉科カナとのW主演で2人の「女たち」の生き様を見せることで物語の推進力を増したいところだったのでしょう。
ただそのように風呂敷を広げたがために解決してない部分が多すぎます。
ラストシーン(ラストカット)は意味不明。

美咲も香織も抱えてるものは重いにも関わらず、最後の大団円はイマイチスッキリしないんですよね。

私は倉科カナファンなので本作を観ようと思ったきっかけは倉科カナなんです。
だけど、もっと篠原ゆき子が主役なのであれば彼女中心に物語を展開した方が一本の柱ができて良かったのではないかなと。

そもそも美咲と香織の関係性も謎すぎます。仲が良いのは十分に伝わりましたが、年も離れており、香織が町に戻ってきたのが小学校の学童以来。
2人の仲良さの根元の部分も見えなかったのが致命的だなぁと。

美咲、香織、高畑淳子演じる美咲の母、筒井茄奈子演じる香織の妹リン、サヘル・ローズ演じるホームヘルパーの田中マリアムと5人の「女たち」を中心に進む物語。
倉科カナ、高畑淳子、サヘル・ローズがとても演技や存在感が良かっただけに、映画としての粗が見ていて痛々しかったです。

作品を好意的に捉えれば、美咲という女性は国のシステムの被害者という見方もできるでしょうが、それにしても40歳手前にしては非常識な言動が多く、全くキャラクターとして乗れませんでした。

※2021年新作映画70本目
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