じろちぃ

クライマーズ・ハイのじろちぃのレビュー・感想・評価

クライマーズ・ハイ(2008年製作の映画)
3.8
さすが元新聞記者原作。
一面トップを日航機事故にするか地元が輩出した政治家の靖国参拝にするか、その場合、毒消し記事を自社で書くか野党談話で他人事にするかのやりとりなどは面白い。
原作者の在籍した地方新聞社で交わされる議論にしてはちょっと大きいかなという気はするけれども。(失礼)

社内のゴタゴタは半沢的ワクワクがあるし、役者さんたちも達者。携帯電話のなかった時代の奮闘ぶりも興味深い。
ただ、忘れた頃に唐突に挟まれる登山は、ちょっと違和感。ラストの締めかたも違和感。わかりますよ、言わんとしていることは。わかるけど…それいらんよな…。いる?

そして、実際の事故や事件、災害を扱う映画について毎度思うのだが、そこまでエンタメとして消費するのはどうなんだろうなと考え込んでしまった。遺書の内容とかね、まさか映画としてエモい音楽流されて使われるとは思わず、死を目の前に家族に向けて精一杯の魂の叫びを残した人がいたわけで。当時、その文面が公開された時の衝撃は今でも覚えている。何十年過ぎたとて、エンタメとして消費してはいけないもののように感じてしまう。

その日、地球の裏側にいた自分は「ニッコー、オチタ」とカタコトの日本語で知らされた。情報はそれだけ。詳細わからぬまま翌日帰国。ネットもない時代。テレビで少しずつ明らかになる事故の状況。写真週刊誌にはヘリコプターで吊り上げられる生存者の姿。圧力隔壁。そしてあの遺書。死者の数があまりにも大きな数字だったせいか何かぼんやり受け止めていたものが、あの遺書でグッと焦点が合ったような衝撃。うまく言えないけれど。衝撃だったんですよ。本当に。

そんなこんなで、やっぱり個人的な遺書までエンタメで消費するのには抵抗があるんだよな。

そしてそして、繰り返しますが
やっぱり山パート、親子の再会、蛇足じゃない?
じろちぃ

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