べし酒

マッドマックス:フュリオサのべし酒のレビュー・感想・評価

4.5
ワーナーのジャパンプレミアにて先行鑑賞。

シリーズ前作「怒りのデス・ロード」で実質的な主人公であったフュリオサの前日譚を描く物語は、まず今作の主軸である理不尽に運命を狂わされ自由と愛する人を失った彼女の復讐譚としての爽快感があり、さらに「デス・ロード」での彼女の行動の原動力と意味合いをしっかり補完補強して再び前作へと物語を収斂していくという、爽快感の二乗効果とでもいう面白さを感じられた。

薄汚れたソーことディメンタスの暴力と舌先三寸で支配されるバイク軍団と、まだ壮健さを感じられる時代のイモータン・ジョーの宗教的に形成される死をも恐れぬウォー・ボーイズの対比がなかなか面白い。
ディメンタスはただただ自分が享楽を貪りたいだけの人間に見えるが、比べるとイモータンには組織やコミュニティ作りのヴィジョンがある様に見え(他者に犠牲を強いるやり方自体は変わらないが)リーダーというか支配者としては分がある様に思えるのが面白い。

前作でフュリオサが「母は攫われてから3日で亡くなった」と言っていて、それは単に比して生き延びた彼女が強い人間であるという意味合いなのかと思っていたが、母は攫われたフュリオサを取り戻すために戦い、故郷の緑の地のことを喋らずに殺された強い人間だと描かれたのは胸熱であった。攫われたフュリオサを追いかけていくアクションシークエンス一連がほんとカッコいいんだよね。

今作では、母が囚われた時とメンターとなったジャックに危険が迫った時の二回フュリオサが助けに戻るシーンが描かれたが、これは一見冷徹に見える彼女が、大事に思う人に対しては自らの危険を顧みず行動する愛情深さ(と無謀さ)を持っているということを描いているのかなと。

このフュリオサが心を許すジャックは今作でのマックス的な存在であるのかな。前作のマックスよりはフュリオサに対して優しいけど、イモータン軍団にいる時点で負け犬ではあるんだけどね。
そしてワンシーンだけ本物というか前作と地続きの過去マックスと思しき存在が引き画の後ろ姿だけ登場するんだけど、彼がフュリオサと実際に遭遇して助けていたのか、単に傍観している姿のサービスカットなのかは観客の想像次第かな(笑)

フュリオサの腕が果たしてどういう経緯で失われるのかというのも、下世話ではあるがやはり今作で最も興味惹かれるエピソードであった。敵に切断されてそこに対しての怒りからの復讐となるとちょっと彼女のイメージと違う気がして、やはり自ら傷付いても生き抜いて目標を果たすという強い意志を持つ人間として描かれたのは納得。

前日譚としてオーガニック・メカニックがイモータン軍団にそう加わったのかとか死体男爵の乳首ピアスの由来がそこから来てるのかとか、鉄馬集団のヴァルキリーが登場してたりとかの小ネタ的な前作への繋がりの盛り込みとそう来たかの復讐譚の完了にニヤニヤとしつつ、エピローグとしてしっかりと「デス・ロード」への連結シーンでの締めにアガる。

今作のフュリオサを演じるアニャは前作で演じたシャーリーズ・セロンと顔は似てないと思うんだけど、でも間違いなくフュリオサだったなと。あの鉄の意志を示す目がフュリオサらしさを感じさせられてアニャで良かったなと。
フュリオサのさらに子供時代を演じた子がメチャクチャ美少女で割とシャーリーズ・セロンに似ていて、この子もアニャとはそんなに似ていないんだけど次第にギラついていく目元の表現のおかげか、違和なく成長した姿に繋がって感じられるから不思議ですわ。

前日譚だけに「ヒャッハー」な基地外感あるキャラクターや世界観はやや薄れているけど、その分アクションシーンの数々や重量感溢れる車両のカースタントは全編に渡ってどのシーンを切り取ってもカッコよくて見入ってしまったよ。
面白かったす。多分リピート鑑賞すると思う。

【追記】
2024年5月31日
TOHOシネマズ日比谷にて2回目鑑賞

死体男爵の乳首いじりはディメンタスの鎖乳首千切れに触発されたと思っていたが、もう登場時からいじってましたわ(笑)

エンドロールにマッドマックスの役名が出ていたけど演者はトム・ハーディではなかったです。
べし酒

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