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私は確信するの39のネタバレレビュー・内容・結末

私は確信する(2018年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

法廷モノは超つまらないか超面白いか分かれ目が激しいが、やはり実際の事件を扱ったものは強いよね。しかもそれが未解決の完全犯罪ときたら面白いに決まってる。ただこの映画がすごいのは、非常に内容に力のある事件を扱いながら、独自にフィクション要素も交えて物語に昇華させているところ。

映画みながら「この主婦すごいな」と感心しっぱなしだったけど、なんだ架空の人物か!(モデルはいるが)と、映画を観終わってかなり拍子抜けしたんだけど、じっくり考えてみたらすごいキャラクター生み出したなと。

私はノラが事件にのめり込んでいく理由も良く分かったし、観客に第3者でわる彼女の視点から事件を見せた方がより効果的になるから監督はこの人物を主人公にしたんだなと納得していたら、意外にもノラの行動に疑問を覚える人が多いこと…。たしかに子供のことはおざなりにしてしまっていたかもしれないが、自分がよく知っている子の母親が失踪して遺体も見つかっていないのに父親が犯人だと疑われ続けて――なんて状況があったら助けたいと思うだろうし、しかもあんな大事な証拠を弁護士に渡されたら「真実は自分しか知らない」という過剰な自意識だって出てくるだろう。しかも国の法律はボロボロで警察も検察も憶測しか言わなくて、犯人っぽい愛人の男が嫌~な喋り方で嘘ばっかついてて極めつけに法廷に革ジャン肩にかけて入ってくるようなヤツだったら…!!これはのめり込むよ、きっと誰でも。

どちらかというと一番重要な証拠集めを、うま~くおだてあげながら素人に任せたデュポン弁護士に不信感を抱いてしまったけれども。最終弁論の前日だって、ノラは最後まで事件のこと考えてたけど、あの方寝てたよ?言ってることはごもっともかもしれないけど、責任を託して自分の一味にした素人を突き飛ばすなんて…ノラかわいそうよ。平凡な主婦が休廷のわずかな時間に音声ファイルを編集する高度な技術を、最初から身に付けていたとでもお思いですか…⁉

これだけは言いたいのは、ノラはとてもいい母親だと思わせるシーンがちゃんと描かれていたこと。事件に興味を示す息子に”推定無罪”や”情痴殺人”についてちゃんと教えていたこと(母が自分をおざなりにしている大きな理由である事件について自分から歩み寄ってきてくれる息子がすばらしいというのは大前提だけども)。「子供は知らなくていいの」とか「疲れてるから後で」とか一言も言わずに、息子を子供扱いしないで一人の人間と見なしてちゃんと自分の意見を言って一緒に悩ませてくれる親ってなかなかいないと思う。この見せ方があるだけで、グッと物語は面白くなっていたと思う。


この裁判の「ヒッチコック狂の完全犯罪」ってキャッチ―なコピーはマスコミのうまいプロモーションだよなぁ。こんな面白そうな見出しつけられてしまうんなら、今後気軽にサスペンスとかバイオレンス映画好きとはみんな言えなくなる…。私の場合なら、もし身近で事件が起きてその容疑者について「キム・ギドクが好きと過去に発言していた」なんて情報を目にしてしまった日には「絶対こいつが犯人だ‼」と疑うことなく確信してしまうだろう…。


久しぶりにじっくりパンフレットを買って読んだ作品でした。そして今年のTODOリストに「裁判傍聴に行く」を追加しようと思った。
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