konoesakuta

セブンのkonoesakutaのレビュー・感想・評価

セブン(1995年製作の映画)
4.8
 美。フィンチャーの創り出した映像世界のこだわりと美しさに脱帽。

初めて観たときには「すさんだ雨の街並み」がどうやったらこんな風に描く(映像処理する?)ことができるのかわからないし驚かされた。陰鬱な雨と、少ないライトで照らされたグルーミーな犯行現場。一転して明るみのもとにさらされる首謀者と渇いたロケ地。異世界から現実にグイっと連れ戻される。

カメラワークの自然さ、あざとくない感じがよい。寄り、2ショット3ショット、大空からの遠景。狭い空間から広大な空間へ。ミクロからマクロへ。

「よりかかる壁もない場所でとほうもない選択をしなければいけない焦燥」「経験の乏しい若さが選ぶ刹那」を不安定に収束させる。物語を邪魔せず、それでいて計算されている。

 映像が語る。舞台の完成度があまりにも高く余計な説明がまったくいらない。

ラスト以外のストーリーは凡庸。でもあまりの映像美と二人の刑事の熱演によって終始画面に引き寄せられる。唐突に現れる首謀者にも違和感をあまり感じなかった。

七つの大罪のはらむ雰囲気を共有できない自分に多少いら立つ。カトリックの方なら宗教のもつ独特なムードをより感じ取ることができるのだろうと思うと嫉妬。日本なら横溝作品のような土着性をうまく感じ取ることができるかということに似ているような気がする。

スタイリッシュ。

《2018 5月 大幅加筆推敲》