PERSPECTIVE

ドライブ・マイ・カーのPERSPECTIVEのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.7
得てして映画監督とは何かしらのフェチで、役者はそのあおりを受けて記号化されやすいものだと思っていたが(キューブリックやマイケル・チミノがいい例だ)、これはまさかまさかの超局所性・役者フェチ映画であった。

真っ赤なサーブ900はプレイバックよろしく真っ赤な車という記号で、広島や北海道もただの座標でしかない。徹頭徹尾役者の仕草、声の魅力を存分に引き出すことに集中した静かな演出には驚嘆するほかない。(そういえば所属していたサークルに西島秀俊がものすごく好きな方がいらっしゃったが、氏はこの演出をどう見るだろうか)

そしてこの演出に100%フィットしていたのが脚本である。要約するならば、「人と人との間に必ず存在する断絶をどう受け止め、その間にどんな橋を架けるか」という感じになるだろうが、それぞれの役者への視線は断絶の深さの想像を、空間の静けさはそこへの没入を存分に促したことで、終盤に橋が架かって以降の展開はとてつもないカタルシスが生まれた。

長尺でありながら途切れぬ緊張感と深さを作り上げた監督には畏敬の念を抱くのみ。いやはや、これだから映画はやめられない。
PERSPECTIVE

PERSPECTIVE