岡田将生の怪演っぷりが意外と村上春樹作品のテイストにハマってたのが面白かったが、見終わって数時間後に強く思い起こしたのは手話の韓国人役の女性の演技だった。
あの役柄は唯一、心底幸せそうに見えた(公園でのリハで「私はとっても幸せ」と相手役に語るシーンがあった)。
夫以外には言いたいことを伝えられないと思っているし、誰かの心をのぞこうという期待もない。
最後に出てくるセリフでもある通り、自分にまっすぐに向き合い自分自身を生きることしかできないことを知っている。
車内の座る位置やたばこを吸う場所の変化で関係性をあらわす演出はとてもらしいし、最後のマスクの使い方はにくい。
音響もすばらしかった。ドライブ中の風の音やホールを出るときの空気圧の変化がとてもリアルで、その場にいるかのようだった。