mo

ドライブ・マイ・カーのmoのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.3

『本当に他人を見たいと思うなら、自分自身を深く、真っ直ぐ見つめるしかないんです』


村上春樹原作、カンヌで脚本賞ほか4冠を獲得した濱口竜介監督の人間ドラマ。
短編集の中の一篇を、179分もの長尺に仕上げ、それでいて無駄なシーンを感じさせない監督の脚本づくりに脱帽。
登場人物をそれぞれしっかりと掘り下げつつ、じわりじわりとラストの感動にもっていく。巧み!


原作を読んだことがないのでどこまでオリジナルかわからないけど、セリフのひとつひとつにもこだわりを感じた。
危うい、ゆえに愛しくなる不器用な人間たちによる距離感と温度感がちょうどいい会話というか(この辺は村上春樹節なのかしら)。

特に刺さった言葉を抜粋したけど、最近、私も似たようなことを感じてばかりだったな。
私から見るあの子と、他の誰かから見るあの子はどうしたって違う人物で、結局私たちって自分というフィルターを通してでしか他人を見ることはできないんだよね。
価値観、期待、思い込み…色んなものが対象を補正したり、歪めたりする。
時には「夫婦」や「恋人」っていう関係性さえフィルターのひとつになって本当の姿を隠す。

それでもできる限り、裸のままのその人を見てあげたいと思うし、見てほしいと思う。
そしてそれを受け止めることも明け渡すことも、躊躇しないくらいまっさらでありたい。
あとはやっぱり、他人と関わることでしか見えてこない自分もいるね。


偉そうなことあんまり書けないけど、すごいカンヌらしい作品だなと思った。
mo

mo