いや、凄すぎる。分厚い小説を一気読みしたかのような満足感。面白い面白くないとか、好き嫌いとか、そういう次元の話じゃない。ただ単に凄すぎた。評価せざるを得ないっていう感じ。圧巻。
「どんな人生を歩んだらこんな脚本が書けて、こんな画が思い浮かぶん?」みたいなシーンを、一切見せびらかすことなく静かに何度も連発してくる。この衝撃はもはや暴力。人種、言語を超えて心の底から未知の感情をぶつけてくる。映画が現実を侵食し、現実が映画を食い殺す。しかし小説も負けじと襲いかかってくる。まるで三つ巴。
濱口竜介は、脚本やその台詞の言い回しが苦手な監督だったけど、今回の『ドライブ・マイ・カー』ではそれを見事に昇華して確実に作品の中に落とし込んでた。非の打ち所がなさすぎる。長尺なので、自分に集中力がないところと、飽き性なところを除けば、間違いなく大傑作だった。