原作短編"ドライブ・マイ・カー"の、演技・嘘でやりくりして生きるというある種救いのない展開に、"木野"の正しく傷つくことを是とする進歩を繋ぎ合わせる脚本の業に魅せられる。ワーニャ伯父さんの台詞が家福の心情にリンクしたり、その台詞読みの為のカセットテープに亡き妻の声が吹き込まれているというオリジナリティも然り、濱口監督の仕事がよく分かる作品だった。"シェエラザード"の続きを描いて家福が聞けなかった妻の言葉を高槻の口から語らせる脚色も見事。
変えられない過去・他人に囚われることなく、自己に落とし所を見つけるまでの成長譚。