ミヅキ

ドライブ・マイ・カーのミヅキのネタバレレビュー・内容・結末

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

村上春樹の原作を鑑賞当日に読んで、記憶がフレッシュなうちに鑑賞してきた

原作が短編であるのに対して映画が3時間という長さだったせいか、かなり脚色された内容になっていた

印象的だったのは、映画で新たに付け加えられたシーンで、ドライバーの渡利が家福と一緒に生まれ故郷の上十二滝村まで広島からはるばる運転して、かつて地滑りが起こった時に母を見殺しにした場所である渡利の実家の跡地を訪れるところ

村上春樹の小説でよくあるストーリーとして、登場人物が、自分はどこで道を間違えたのか、あるいは不本意に引きずりこまれてしまった運命の転換点はどこにあったのかを探る為に、過去に思いを巡らせ、わだかまりのある場所を訪れたり旅をしたりすることによって、自分と向き合い原因の解明に努める、というものがある

家福が渡利と一緒に上十二滝村の実家を訪れるシーンは、まさにこの「過去の核心に触れて自分と向き合う」という行為を表していて、脚色はされているものの原作の作者に対する敬意を感じた

正直原作を読んだ時はテーマみたいなものが見つけられなかったのだけど、映画がその部分を綺麗に補ってくれていて、最後になるにつれて全体像が見えてきた

チェーホフの『ワーニャ伯父さん』のテーマとのシンクロも見事だった

神さまを信じているか信じていないかは別として、「わたしたちが死んだときは、わたちは苦しみました、泣きましたって神さまに言うの。そうしたら神さまもきっと憐れんでくれる」と優しく語りかけるソーニャ役の手話には、人生において傷つき疲れた全ての者の心を癒す力を感じた
ミヅキ

ミヅキ