淡くぼやけた質感と寒色系の画面、低体温な台詞回し、カットのモチーフ…脚本や内容だけでなく全てが村上春樹の世界観を高度に再現したなぁと。そして共鳴している監督自身の憑依。故に村上春樹小説が徹底的に合わない自分にはしんどい時間でした。監督の力量と良い作品なのは分かるけど、、、
今の時代に、ドストエフスキやチェーホフ、多様性として配置された人物のキャラクター設計、演劇…この映画は、古き昭和の教養主義者の思索をただ聞かされている時の感じに似ている。示唆に富むテキストは多いのだけどある一定の表層で言葉が上滑りしていき物語としては深く残らない。痛みや苦しみすらも深みに沈まない。意図的なのか否かはさておき。
その感想もまさに村上作品の読後感と同じでした。
