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ドライブ・マイ・カーのYTYKのネタバレレビュー・内容・結末

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

どう言う話だったかと聞かれると少し難しい。受け取り手によって、いろいろ変わってきそう。主人公の家福裕介が、妻である音に不倫をされ、あげくに妻は亡くなってしまう。裕介自身は、妻が離れていくことが一番怖かった。なにもなかったかのように振る舞っていた。妻も、夫に対してその事実を言い出せないままお互いはお互いに嘘をついて、苦しんでいた。音が裕介に話す枕物語は、続きがあるところで終わっていた。好きな男の子の家に主人公の女の子は空き巣をする。繰り返すたびに、女の子は自分がそこにいた証を残していく。普段は優秀で真面目な優等生の女の子。女の子にはルールがあった。空き巣をした、男の子の家の中では自慰行為はしないということ。しかし、最後の最後、またいたいつものように空き巣をすると、ついに自慰行為を抑えられなかった。服を脱ぎ捨てて自慰行為をしていると、階段を登る音が聞こえてきた。終わった。見つかってしまう。男の子、またはその母親か父親、いずれにしてもこれでこの空き巣行為が終わる。女の子は少し、解放された気分でいたのかもそれない。その後の話を裕介は聞くことができなかった。その前に、妻が亡くなった。妻が亡くなる前、音は裕介に、今夜話がしたいと言った。裕介は、この日遅くに帰った。確実に、この日になにかが終わってしまうと悟ったから。この音の枕物語は、音が自分自身を投影していたのだと思う。裕介に結末を話せなかったのは、音の話に出てくる男の子が、裕介自身だったから。枕物語の続きは、実は登ってきたのは、家の誰でもなく、もう一人の空き巣だった。空き巣は半裸の女の子をみると強姦しようとした。女の子は必死で抵抗し、もっていたボールペンで何度も刺した。空き巣は死んだ。殺人まで犯してしまった。そして女の子は、その死体を最後の証として置いていった。しかし次の日、なにもなく日常が訪れた。男の子も普通に登校し、なにごともなく過ごしていた。家の前を通ると、監視カメラが設置されていたことを除いてはいつもと変わらない。女の子はついに耐えかねたのか、最後に監視カメラに向かって何度も、何度も何度も、音がなくても伝わるようにはっきりと、「私が殺した」と続けた。 この続きは、音が演出家としての裕介に紹介した俳優の男性(岡田将生)が、音から聞いたと車の中で話した。つまりは、音自身も、枕物語のおんなのこも、自分がした過ちを叱って欲しかった。そして、受け入れて欲しかったんだろうと思った。運転手の女性(三浦透子)も、裕介に対して、自身の過去、母親の話をした後で、不倫をした音さんも、妻としていつも寄り添ってくれた音さんも全て音さんで、全部受け入れてあげて欲しいと言うシーンがある。そこで、裕介は溜め込んでいた自分の思いや後悔を吐き出す。喪失していたものが再生され始める瞬間。
音は亡くなる日に、枕物語の最後を裕介に伝えようとしていたのだろうか。
戯曲「ワーニャ伯父さん」の話と裕介の人生が重なって、途中は演じることができなかったけれど最後には演じることができ、さらにはその話の中でも裕介はセリフに救われていた。1回しか見ていないからまだまだ2回、3回とみると、隠れていたものが見えてくるのかなと思ったり。登場人物のほとんどが殺人?を犯しているという共通点だったり、岡田将生が裕介にバーで話した「(セックス)しないと話せないこととかないですか?」というこの後の音の枕物語の最後をきいていた男という伏線、岡田将生は、裕介に嫉妬していると言っていた。それは、音の枕物語を聞いて、それに登場する男の子が裕介だとわかっていたからなのかもしれない。だから、最後の結末を知っていて、罪を謝罪するところを聞いて、岡田将生も清々しい顔で罪を認めたのかもしれない。音が裕介を本当に愛していたと岡田将生も感じたんだろうな。ほんとうにみていて繋がって3時間なんかあっという間だった。正しく傷つく。 
サーブかっこよかった。車乗りたなった
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