水辺の君に

ドライブ・マイ・カーの水辺の君にのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
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原作既読。
受賞云々は置いといて、あの原作をアレンジ含めてこの感じに落とし込めたのは良かったですね。断層的に解釈させるめちゃくちゃ良い脚本。3時間かかるのもやむなし。原作は良くも悪くも春樹節のタイトルと内容なんですが、そこから他短編の要素も上手く盛り込んで抽出した「再生」というよりも「再生のため喪失に向き合う」というテーマを上手く実写化してましたね。
監督自身の滝口メソッドすらも盛り込んだ上での、元々のキャラ的にも演技的にもこんなに春樹モノにハマるとは思わなかった西島秀俊。ブレイク後に何にでも出てきたことが報われてる。勿論、岡田将生もこの軽率な役者をしっかりといつもの感じではなくチャンネル合わせて演じてて良かった。実際のメソッドが作品内の演出として上手く機能してて素晴らしい。
結局、妻の浮気ではなく、子供の死も含めてしっかり妻と向き合わずにきたこと=真実から目を背けてきたことに対して向き合うことこそが再生なわけで。それに合わせて三浦透子の再生もラストで伝えてくれてるのも含めて、やはり何年かかっても向き合わないと再生は訪れないという正しき春樹節。な作品でした。
誰でも大小関係なく喪失は抱えてるはずで、それとどう付き合うかも個人差ですが、やはり向き合うための何かを人は欲しててそれが見つかることは幸福なんですよね。
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