もこもも

ドライブ・マイ・カーのもこもものレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.0
2年前に妻を亡くした舞台俳優で演出家の家福が専属ドライバーのみさきとの出会いを通して自分自身と向き合っていく姿を描いた作品

邦画らしい哀愁と暗さが溢れていて
手放しに楽しかった!面白かった!
っていう作品ではないけど
3時間という時間を感じさせない
魅力と深みが詰まっていて見入ってしまった
静寂が語る空白の時間も素晴らしい
大切な人の死を通して自分を見つめ直す作品は
今年に入って何本か観てきたけど
個人的にその中では1番胸に刺さった

「私は思うの
 真実というのはそれがどんな物でも
 それほど恐ろしくないの
 1番恐ろしいのはそれを知らないでいること」

妻が亡くなる2年前から始まり
スタッフロールを経て2年後の物語が進み出す
40分経過してのスタッフロールっていうのは
かなり新鮮やったけど、それよりも
もう40分経っていたことが衝撃で
それぐらい惹きつけられる強い力を感じた

「どれだけ理解し合っている相手でも
 どれだけ愛している相手でも
 他人の心をそっくりのぞき込むなんて無理です
 自分がつらくなるだけです
 でもそれが自分自身の心なら
 努力次第でしっかり
 覗き込むことは出来るはずです
 結局のところ、
 僕らがやらなくちゃならないことは」
 自分の心と上手に正直に
 折り合いをつけていくことじゃないでしょうか」

ここの車内シーンが作中で1番引き込まれた
家福の知らない音が語られていることや
このシーンのセリフの深みも理由やけど
高槻の表情とか話し方とか、ようは
岡田将生くんの演技力に引き込まれてしまう

みさきの実家のシーンも胸に残ってる
母の別人格が本当であれ演技であれ
音の本心や真実がどんなものであれ
全てを本当として捉えて行動する
多分それは難しいことやけど
「僕は正しく傷つくべきだった」の言葉で
そうしなかった時に大きな後悔として
胸に残り続けることの苦しさを感じた

人間って、感情って、言葉って難しい
真実を知っていようと知らなかろうと
会いたい人にもう会えなかろうと
取り返しのつかない過ちを犯そうと
どれだけ苦しもうと辛かろうと
生きていく他ない
生きていけなければならない
その重みと深みをずっしりと感じる
ユナさんの演技力も素晴らしかったし、
赤のサーブ900めっちゃかっこよかったし、
EDで流れる『Drive My Car』めっちゃ好き

"長い長い日々と長い夜を生き抜きましょう
運命が与える試練にもじっと耐えて
安らぎが無くても、他の人のためにも
今も、歳を取ってからも働きましょう
そして最期の時が来たら、
大人しく死んで行きましょう
そしてあの世で申し上げるの
私たちは苦しみましたって、
泣きましたって、辛かったって"
もこもも

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