TAICHI

ドライブ・マイ・カーのTAICHIのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.8
遅ればせながら観ました。
本当にmy carをdriveすることに驚きつつ村上春樹はまだデビュー作の風の歌を聴けしか読んだことがなく、まだまだニワカですが、風を感じるような爽快感と出てくる女性たちの魅力が変に村上春樹っぽいと感じてしまった。

色々な考察を読み、自分なりに解釈してみたのですが、出てくる家福さんの車は自分自身を映している器であり、一種のロードムービーであると感じた。

チェーホフの戯曲を通じて、テキストに全てを預ける、自分自身を他者に預けるといったのが描かれており、妻の音との生活は幸せで満足であると思っていたが、他の男と寝ており、その裏切りさへも知っていながら、許してしまっており、他者に自身を預けてしまい、受け身になってしまっていた。
北海道の村の雪のシーンで自分自身と向き合い、対話をし、初めて本音に震えながらも、生き残った者たちが死んだ者たちを思いながら、背負い、伝えて行かなければならない。家福さんはわかっていながらも素直になれずに逃げていた。車の中で戯曲を感情を出さずに読み合う行為が他者、つまりテキストへ預けてしまっていたことで素直になれずにいた。
でも生きているの自分たちであり、生きていかなければならない。だから車に乗りアクセルを踏み、自分の道を歩いていく。まさにdrive my carなのだと、納得できた。

最後に近いシーンの手話を交えたシーンは儚くてもその中にとても強い言葉の力を感じ、生きていくことへの大切さと元気をもらえた。自然と涙が出ており、いい映画に出会えたし、素晴らしいと自分の中で落とし込めた感性に感謝です。
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