gaasan

彼女のgaasanのネタバレレビュー・内容・結末

彼女(2021年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

 原作を読んだことがあるのですが、展開がごちゃごちゃしていること、セリフが理屈っぽいこと、絵がキャラクターに合っていないことなど、とにかく苦手な作品でした。
それで迷ったのですが廣木隆一監督ならばと思い、観ました。

 まず、キャスティングがいい。主人公2人には、出会いから「同性を思う者と、思いがけず同性に思われてしまった者」というぎこちない関係性があります。そのぎこちなさが上手すぎない水原希子ちゃんとさとうほなみさんにピッタリ。ロードムービーのラストに向かうにつれ、ほんものやん!と言えるほど、しっくりくる2人がとても良かった。

 演出と編集。大胆なシーンが多いのでそこばかりに目が行きそうですが、必要なシーンばかり。レイ(水原希子)が行きずりの男に身を任すのも、本来は同性愛者ではないと言う七恵(さとうほなみ)に対する引け目から。そしてレイと七恵のセックスシーンですが、これ、もしかすると今までの洋画・邦画の中でもかなりのレベルだと思います。エッチな気持ちになるために観るAV以外でのセックスシーンは、映画鑑賞中の集中力が途切れてしまうので邪魔、好きじゃないのですが、このシーンは素晴らしい!ずっと思い続けてきた人とのたった1度のセックス、レイの気持ちがたまらず泣けて泣けて・・・。やり返してみせる七恵もいい。あのシーンは、最高。万人におススメはしませんが(笑)。長回しが多用されていて、編集も大変だったと思います。でも、必要なシーンばかりでした。ブラボーです。

 そして脚本。あの原作をよくぞここまでブラッシュアップしたと思います。ほんとによくやった!というか、原作とは別物ですね。一緒にしちゃいけない。原作を読み込んだうえで、しっかりとテーマを定めて作り上げたのだと思います。素晴らしい。

 私は、同性愛者と異性愛者と分けることがいいと思えません。そもそも「LGBTQ」という表現もどうかと思っています。人を好きになるのに理由があるはずがないのに、むしろ「LGBTQ」を公言する人たちの方が差別していると思うし。
この作品の真木よう子に表現されている「同性愛者同士のパートナーになり得る人」と、「好きな人」は違う。
相手が誰であろうと、心から求め合った2人の抱擁は気高い。
その人がどんなクズでも、心から思う人のために人を殺すこともできると言える「恋」は生きる力になる。男と女、男と男、女と女、いずれも同じ。

それがいつか「愛」になるといいね、廣木監督や脚本の吉川菜美氏がそう伝えたかったかは分かりませんが、この作品からはとても素敵なメッセージを感じました。
最高でした。ありがとうございました。
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