長内那由多

あの夜、マイアミでの長内那由多のレビュー・感想・評価

あの夜、マイアミで(2020年製作の映画)
5.0
想像以上に複雑な映画で、レジェンドらの思想的背景や連帯を知っておかないとマイアミの夜、一堂に会した(フィクションの)ダイナミズムを理解しきれない。「肌の明るさが違う」という言葉に象徴されるように、BLMの背景には幾重もの思想のグラデーションが存在する。

レジーナ・キングは名優ならではの芝居を重視した演出で、若手俳優達のキャストアンサンブルを導いている。実質上はマルコムXとサム・クックの物語であり、演じるキングズレー・ベン・アディルとレスリー・オドム・Jr.が素晴らしい。ラストシーン、名場面。

並べてみると2020年、BLMの年にスパイク・リーが『ザ・ファイブ・ブラッズ』で先陣を切り、『マ・レイニーのブラックボトム』『あの夜、マイアミで』の戯曲原作映画が思想面から掘り下げた。『あの夜、マイアミで』の原作者ケンプ・パワーズが脚本を手掛けた『ソウルフル・ワールド』も実はピクサー初の“黒人映画”である。
長内那由多

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