よどるふ

映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ) 2021のよどるふのレビュー・感想・評価

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2年ぶりに劇場に戻ってきたドラえもんが姿を見せずに声と影だけで登場し、続くOPテーマと共に流れる“未来の科学技術”と“工夫”によって作られていく自主制作映画の映像によって、早くも涙腺を刺激させられた。

のび太たちと比べて小さなサイズであるゲストキャラクターたちの暮らす世界は、のび太たちの暮らす世界と地続きにあり、それによって「日常に侵食してくる非日常」が際立つ。その最たるものが、しずかちゃん家の窓を割って部屋に侵入してくる宇宙戦艦のシーンだろう。

精巧に作られた建物や乗り物のミニチュアを実物だと錯覚させる技術を発展させてきた“映画”という媒体で、「ミニチュアサイズの危機を“実物大”に感じさせる」話を展開する適切さ。そして、そんな話を「自主制作映画の撮影風景」から始めるのだから気が利いている。

スモールライトを奪われて小さくなったままののび太たちと、ゲストキャラクターたちのサイズの違いについては、映画が終わる頃には意識をしなくなっていくのだが、だからこそ、あの劇的なクライマックスが効果的になる。ここにも「日常に侵食してくる非日常」がある。

普段は小さなテレビの中で活躍するキャラクターたちを観ているからこそ、映画館における“巨大化”したキャラクターたちに迫力を感じる。「映画館で映画を観ること」とは、「巨大なスクリーンに投影された巨人を観ること」でもあると改めて気付かされる映画だった。

のび太たちが言葉だけでなく行動でパピに寄り添うために、スモールライトで小さくなるシーンでは、旧映画版にはなかった「パピが小さくなったのび太たちに驚くリアクション」が追加されていて、改めてドラえもんの道具にワンダーを感じさせてくれる良さがある。
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