みおこし

ザ・ホワイトタイガーのみおこしのレビュー・感想・評価

ザ・ホワイトタイガー(2021年製作の映画)
3.9
アカデミー賞脚色賞ノミネートの1本。

インドの貧しい村で生まれ育った青年バルラム。彼は持ち前の抜け目なさを生かして、ひょんなことから裕福な家庭の運転手として働くことになる。少しずつ一家の信頼も勝ち取っていく彼だったが、ある事件が起きたことによってとある”野望”を抱くようになる…。

ものすごく面白かった!!インドに根強く残るカースト制の中でも、最下層に生まれた主人公が、富裕層の人々と対峙したことで自らの境遇、そして貧富の差が生んだ闇の部分に気づかされ、極端な縦社会を果敢にものし上がっていくという壮大な物語。
出自を乗り越えて、ようやくありついた仕事も実際には奴隷のような扱いに変わりなく。心を交わしたと思っていた人々との間にも軋轢が生じ、いつしかこの状況を憂うとともに「自分はもっとできるのでは?」と可能性を信じてアクションを起こしていくバルラムのタフさにシビれるばかり。もちろん100%肯定できるやり方ではないし、ずるい場面もたくさんあるのですが、彼がこの世界で生きていくためには汚い手段も使わざるを得なかったのだろうなと。こうでもしないと成功をつかみ取ることができないと思うと、改めてインドの抱える社会問題や階級問題についても深く考えさせられる1本でした。ニューデリーはもちろん、インドの各都市の現状を生々しいまでに捉えた映像もまた真に迫っていてすごかった。
ちなみにタイトルのホワイトタイガーに込められた意味、ネットで調べて観たのですが観終わってからじわじわ来るので、ぜひ鑑賞後にチェックしていただきたいです!(ネタバレになるので割愛)

観終わった後に”過程より結果”というフレーズが頭に浮かぶ映画でした。それも文字通りの意味ではなく、もっと皮肉のこもった意味合いで…。どんな場合でも成功者の「今」にばかりフォーカスされがちですが、実はその背景には隠された真実や想像を超えた歴史があったのだと教えてくれる1本。
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