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ザ・ホワイトタイガーのtorumanのレビュー・感想・評価

ザ・ホワイトタイガー(2021年製作の映画)
3.9
1世代に1匹しか生まれないホワイトタイガー。それは君だ。

インドの貧しい村出身のバルラムが、地元の地主ギャング"コウノトリ"のドライバーを経て、起業家に成り上がる様を、インド社会への皮肉を交えながら描く、ハードボイルドな立志伝です。

物語中盤の衝撃的シーンから始まり、バルラムのナレーションから3年後から過去へと導かれる時間軸の編集、からは、マーティン・スコセッシ監督の『グッド・フェローズ』のようです。

バルラムのナレーションの語り口が見事です。
印象的なセリフから、インド社会の問題が自然と炙り出され、物語が進展します。

「インドが最も繁栄していた頃は1000のカーストがあった。今では2つだけ。腹が膨れているか、へこんでいるか」

「インド1万年の歴史で最も素晴らしい発明はニワトリの檻」
"ニワトリは血の匂いで自分の死の運命を知っても、暴れもせず逃げようともしません"

生まれつき搾取される身分と、そこから逃れようしない忠誠心。

バルラムが覗き見る"コウノトリ"の豪華な生活、ある事件に対するバルラムへの処遇。
インド社会の小さな縮図です。
バラムの中で膨らむ、インド社会へのフラストレーション。
檻から逃れたニワトリはホワイトタイガーへ…

ラミン・バー監督の初めての作品でしたが、インドの貧困、資本主義、社会問題などを描いてきたそうです。
ジャケットから感じる軽くて小粋な雰囲気とはまるで違う、硬派でアイロニカルな暗黒寓話。
お薦めです。
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