どう

誰かの花のどうのレビュー・感想・評価

誰かの花(2021年製作の映画)
3.0
ふだん多くの人びとがただ「不運な事故」として以上にあえて関心を寄せないような出来事を捉え、そこに関わりを持ってしまった一人として、見るものに多様な問題を提起する良い作品だと思う。

だが福祉に少しでも携わらせてもらった立場から言うと、物足りなかった。
限られた利用時間とはいえ、日々の支援を通じて訪問ヘルパーはおじいさんの認知・判断能力の低下がいつ事故を招いてもおかしくないことを承知している(冒頭では車に轢かれそうになった彼を見つけて送り届けていた)。それでもなお、おじいさんの自由を拘束するのではなく、自宅で家族と穏やかに暮らすことを尊重して支援にあたってきたヘルパーが、彼が事故に関わっているかもしれないと気づいたとき、第三者として正義感を振りかざすことが果たしてできるだろうか。
むしろ、予測できた最悪の事態を止められず父を加害者にしてしまった自責の念に駆られる息子と同じように、ヘルパーもまた自身の無力感と道徳の間で葛藤しながらも、利用者と家族の生活を守るためにできることを微力ながらも模索するのではないだろうか。
認知面の障害をもつ人びとに日常から関わっている支援者たちの、そのような深く倫理的な振る舞いには別段思いを馳せることもなく、「不運な事故」の責任の所在と正義について、あたかも外部から問うことが可能であるような人物として認知症の訪問ヘルパーという設定を採用したのだとすれば、わたしは非常に残念に思う。
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