フクイヒロシ

誰かの花のフクイヒロシのレビュー・感想・評価

誰かの花(2021年製作の映画)
4.5
僕はだいたい映画はラスト近くになると「早く終われ今終われ」と思いながら観ちゃうんですが、、
この映画は「うおっ!ここで終わり!?」とさすがにビックリ。

モヤモヤは残るんだけど、このモヤモヤは主人公家族がこの後数十年抱え続けるモヤモヤと同じわけよね。


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冒頭から画面がすごく綺麗でした。安定した構図。

そうしてたら不穏なカットが挿入されて、斜めの不安定な構図も増えてきて、いよいよ事件が起こり、さらに不穏カットの頻度が増えていく。

エレベーターも嫌ですねえ。
あの狭くて古いエレベーターが乗り物の中で一番怖い。
エレベーターの使い方がうまかった!

エレベーターを使って人物の性格や状況を描写してる。
あの中でしか自分の気持ちを吐露できない女性キャラが悲しい。


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カトウシンスケさんの演技の隙が素晴らしくて。
それも「観客に想像させるため」に引き算の演技をしてるってわけでもなくただ野村孝秋という人物を演じた結果そうなってるのがいい。

孝秋の「受け取らなさ」「動かなさ」がすごい。
到底映画の主役にはならない人物。

確かにこの事件の主役って、妻(和田光沙)とか息子(太田琉星)なんですよね。

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あすなろ会のメンバーもすごかったですね。。
マジの当事者かと思いましたが、、あれは演技なんですよね。
台本もあったのでしょう。

あのリアリティ。
平穏な人生に現れた真っ暗な落とし穴に落とされてしまった方々。
そしてそれは誰にでも起こりうること、という恐怖。

妻(和田光沙)の「私ここに来るレベルなんだ…」なリアクションがまた強烈に悲しい。

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てか、和田光沙さんすごいっすね。
『岬の兄妹』で爆誕!って感じでしたがそれ以降ものすごい数の出演作で、ここにも和田光沙!また和田光沙!って感じでよくお見かけします。

今回の役での「なんかコントみたいで恥ずかしいなって」というリアルで悲しいセリフも最高でした。

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両親の衣装。

特に母親の。
あの何色でもない色。
あの色のテロテロのスラックス(ていうんですか)。

あれと同じ服をうちの母親が着てますよ。あのコーディネートと全く同じものを母が着てます。

父もそう。あの上下と同じの着てます。

で、あの歩き方。あの老い方。あの明るさ。あの「近づかなさ」。

ほんとに俺の親か!ってなくらい同じで。怖かったです。。





てことで、ネタバレはコメント欄に。