このレビューはネタバレを含みます
2022年2月7日
奥田裕介監督と『君は永遠にそいつらより若い』の吉野竜平監督とのトーク付きで鑑賞。
ある日、602号に3人家族が引っ越してきて数日後、風が強く吹いていた日に窓際の植木鉢が落ちて不慮の死亡事故が起きる。
団地内で起きた死亡事故。被害者と加害者が隣人関係である。ある事件の被害者が加害者にならないとは限らない。私たちはいつでも加害者になり得るし、被害者にもなり得る。私も映画を観てヘルパーの長谷川さんのように、孝秋の父を疑ってたし、傍観する孝秋の姿に腹が立ったこともあったが、後半、兄の健人の誕生日にリモコンを使って三人で電話する姿を見て涙を流してしまった。家族に対する疑いと傍観、包容と許し。
エレベーター使用の演出と冷蔵庫の冷凍庫、団地を見せるカメラの視線、缶コーヒーをはじめとする小物を利用した演出、孝秋の働く鉄工場での演出と激しい風と雨を利用した演出など。ロング·テイクが多くて人物の感情が伝わってきたのがよかった。サスペンス的な要素も多かった。
映画の題名である’誰か’の花。その花が誰のものかを特定しないタイトルが印象深い。
最近、「説明的な映画と解釈の余地を残す映画」に関心があるが、本作は前者にあたる映画であろう。淡々と描き出したが、深い響きのある作品。まだ2022年が始まったばかりが、最近観た映画の中で一番記憶に残るほど印象深かった作品。
2月9日、映画『空白』の吉田恵瓊監督とのトークがあるらしい。似たようなテーマを描いている二つの映画なので、トークを聴いてみたい。
疑問点:相太くんが雨の日に車の中で始動をさせてアクセルを踏んだ。これは相太くんの抑えつけられていた感情の噴出だろうか。被害者の遺族である相太くんもまた加害者になり得ることを示す場面なのか。