猛烈な風の吹く日、団地のベランダから鉢植えが落ちて幼子のいる父親が亡くなってしまう。果たしてそれは事故なのか事件なのか。
とても抑えた演出で上質なサスペンスとしての緊張感とともに人を失う心の痛みを絞り出すような映像が続く
兄を失った喪失感とオーバーラップする隣人、父を信じる心と疑う自分、ヘルパーさんの指摘。時に「見ていたんだぞ」と言わんばかりの幼い子。父を庇うのは自己保身か、母や父への思いか、あるいは真実か。正しさとは。
この手の作品では結局真相は開かれたまま終わることが多いが、今作ではきっちり答えは暗示される。それでもなお正しさへの問い、痛みの感情は開かれたまま残る。とても丁寧に描かれた真摯な映画だった