ツクヨミ

ボクたちはみんな大人になれなかったのツクヨミのレビュー・感想・評価

5.0
初めて恋愛を知った"あの頃"に直結する至極のノスタルジー。
2020年佐藤は人の気配がない夜の東京を歩きながら"過去"を思い出していく…
現在からゆっくり時系列を戻して見ていく回想録。今作はまず話の展開の仕方が面白く、2020年から1995年までをゆっくり時代を遡っていく。するとさっき見ていたことが過去になることでいろんな"懐かしさ"を感じさせられるのだ。現代こんな生活をしている人は昔そうだったのかと単純に感心する。また徐々に巻き戻るストーリーは謎の涙を誘う…説明はできないが言いようのないノスタルジーさを本作に感じた。
そして今作は個人的にであるが"自分の過去"を覗いているようだった。作中佐藤は1995年に雑誌の広告から自分の好きな音楽が好きな女性と出会い文通を通して恋愛関係になっていく…これは自分が高校の頃SNSで好きなアニメ作品を通して女性と恋愛関係に繋がった過去を想起させる。そのせいかなんでもない文通のシーンなのに涙が止まらなくなった。この感覚は"メイジーの瞳"を見て感じたことと近く、今作が自分の過去のメモリーに直結する大事な作品になったことは間違いないだろう。
そして佐藤は文通相手加藤かおりと付き合いだし仕事の合間に遊ぶ中になっていく。仕事を休んでレンタカーで目的もなくドライブ、レコード店に行った後2人が好きな音楽について語る、適当にミニシアターで映画を見る、銀河を感じるラブホテルでのんびりだらだら過ごす。佐藤が彼女と過ごした時間は愛しくもあり悲しくもある…自分が求める恋愛はこういうものなのかもしれない。そんな美しい恋愛描写だった。
そして2020年に戻り今までの過去が走馬灯のように流れる演出にも涙。ポスターのセリフ"あの時も、あの場所も、あの人もすべて今の自分に繋がっている"が思い起こされる素晴らしい余韻だった。もしかしたら本作は"ニューシネマパラダイス"に匹敵するぐらいのノスタルジーさがあるかもしれない。
自分の過去を紐解く素晴らしい作品に出会えました。また忘れた頃に鑑賞してノスタルジーさに浸りたい。
ツクヨミ

ツクヨミ