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ボクたちはみんな大人になれなかったのKのレビュー・感想・評価

4.0
2020年から1995年。過去へ遡る構成。こういう作品を観るとき、時間軸通りの流れだったらどう観えたかを考えさせられる。本作の場合、1995年からスタートしていても響くものがあったと感じさせられた。逆行することで引き立つ差にも納得。初めてが初めてではなくなり、新鮮味を失い手慣れたものになってゆく。成長と喪失。携帯電話の登場と進化。それに伴い変わった人との距離感。懐かしい遠さ。公衆電話。文通。字の書き方にもパターンと流行りがあったことを思い出す。そして、その字を練習した時代のことも。当時流れていた音楽。バイト仲間。偶然助けてくれた人。吸えなかったタバコ。「嬉しいときに、悲しい気持ちになる」。両者の流す涙の対比が印象的。小沢健二「彗星」。情景と共によみがえる思い出。ドラマチックにしすぎない加減が丁度いい。何者にもなれなくても、特別ではなくても、過去から現在に至る今という時間を自分なりに確かに生きてきた。幻想と現実。普通の偉大さ。大人になるということ。この映画そのものに、優しく肩をたたかれたような感覚。魅力的な役者さんが多く登場する中、25年という歳月を演じた森山未來さんの表現力は素晴らしかった。
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