柏エシディシ

ZAPPAの柏エシディシのレビュー・感想・評価

ZAPPA(2020年製作の映画)
3.0
音楽史上に唯一無二で特異な音楽性、多岐に渡る創造性、超膨大なディスコグラフィーを誇る希代の天才フランク・ザッパの実像に迫ったドキュメンタリー。
恥ずかしながら門外漢と自認せざるをえないザッパ。
「ビルとテッド」のアレックス・ウィンターが監督で無ければ、本作にも興味すら持たなかったと思うのだけれど、結論、すごく面白かった。
奇妙奇天烈、勝手に人間離れしたフリーキーな天才をイメージしていたザッパ先生が、その実、創造や自由の精神に忠実であり、とても人間臭いヒトであったことが判ってよりその音楽にも俄然興味が湧いてきた。
そして、そんな本作をビル=アレックス・ウィンターが誠実に真っ直ぐに綴ってみせてくれた事に、何だかビルとテッド世代としては胸が熱くなってくる(ミュータントフリークスや時空旅行との振り幅を思うと、なんだがニヤケながらも泣けてくる)

全編、ザッパ先生の金言ばかり。
「音楽は仕事じゃない」なんて、それこそ売れないミュージシャンからセルアウトした億万長者のアーティストまで簡単に言いがちだけれど、他ならぬザッパ先生が言うとその説得力たるや。
「人生で2度と吹けないフレーズを奏でるんだ。そして、君はスターになる」
死の訪れを感じたザッパが若者に送る言葉の重さと貴さよ。

いい加減いい歳だけど、フランク・ザッパが残した音楽の大海原に飛び込むのに遅過ぎるかしら。まだまだお楽しみは尽きないというのはありがたい。
柏エシディシ

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