ニューエスト・モデルのシングル「エンプティ・ノーション／こたつ内紛争」のジャケットがフランク・ザッパ率いるTHE MOTHERS OF INVENTION『FREAK OUT!』のジャケットのパロディだったり、根本敬先生と湯浅学先生の幻の名盤解放同盟仕事だったりでザッパを知ったという人も多いはず。そんなライトユーザーにも本作は興味深い内容になっている。
教会に非難され、警察にコンサートを潰され、ラジオにも放送禁止とされながら、商業芸術、商業的成功とは別次元の世界に存在し、ビートルズ、デヴィッド・ボウイ、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、トム・ウェイツほか数えきれないミュージシャンに多大な影響を与え、ローリング・ストーン誌の「史上最も偉大な100人のギタリスト」において第22位に選出、ロックの殿堂入りを果たし、97年にはグラミー賞特別功労賞・生涯業績賞を受賞した巨人、フランク・ザッパ。その生涯を、何千時間にもおよぶザッパ本人が遺したアーカイヴ素材を駆使して綴ったのがこのドキュメンタリーである。
まず、ザッパのアーカイヴ室の映像に圧巻される。記録魔という言葉は彼のためにあるかのようなリールやビデオの数々。そして、自身のレーベルを立ち上げて自主独立した活動を行い、やがて、本誌読者にはラモーンズの『モンド・ビザーロ』にも収録された「センサーシット」でも知られるPMRCによる検閲との闘争に身を投じる。そこでの発言は非常に燃えるので特に必見だ。さらに本誌読者的にはこの公聴会でのシーンに、あるハードコアバンドのジャケットがチラッと写るので目を凝らして観てみるのもいいかもしれない。
晩年の純粋な音楽家として姿も非常に印象的で、創作への真摯なアプローチとともにひとりの人間として魅力的すぎるザッパの人生に迫ったドキュメンタリー作品だ。
