映画の道化師KEN

キャラクターの映画の道化師KENのネタバレレビュー・内容・結末

キャラクター(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

2人の共作、それは連続殺人…

監督は「恋は雨上がりのように」の永井聡。主演は「溺れるナイフ」の菅田将暉。加えて、バンド「セカイノオワリ」のボーカルFukase、「アオハライド」の高畑充希、「いま、会いにゆきます」の中村獅童、「クローズZERO」シリーズの小栗旬、「時をかける少女」の中尾明慶、「どんぐりっ子」の松田洋治、「超高速!参勤交代」の宮崎吐夢、「ミツコ感覚」の岡部たかし、「亡国のイージス」の橋爪淳、「完全なる飼育」の小島聖、「星の子」の見上愛、「東京島」のテイ龍進、「家族ごっこ」の小木茂光らが共演!

漫画家として売れることを夢見てアシスタント生活を送る山城圭吾。ある日、一家殺人事件とその犯人を目撃してしまった山城は警察の取り調べに「犯人の顔は見ていない」と嘘をつき、自分だけが知っている犯人をキャラクターにサスペンス漫画「34」を描き始める。お人好しな性格の山城に欠けていた本物の悪を描いた漫画は大ヒットし、山城は一躍売れっ子漫画家の道を歩んでいく。そんな中、「34」で描かれた物語を模した事件が次々と発生する…

売れない漫画家が殺人鬼をマンガのキャラクターにしてしまったことをきっかけに惨劇が巻き起こってしまうサイコサスペンス作品。映画『20世紀少年』三部作の脚本と企画を担当した長崎尚志が10年の歳月をかけて練り上げた完全オリジナル作品。日本の映画としては珍しい、重厚なストーリーで作品の裏に隠されたメッセージが感慨深い、秀作!

まず、本作における重要な部分としてキャラクターという映画タイトルが個人、個性、アイデンティティに関わるものであり、社会における自分らしさとは何かと問いかける心理学的要素が根幹にある。何者でもない自分に憧れの存在(キャラクター)が出来た時、人はその人になろうと衝動的に行動する。いつしか、追いついて憧れの存在の座を奪いとってしまったら、或いは意図せずに奪いとってしまっていたらその奪われた者の存在は何者でも無くなる。それがもし狂気のカリスマ殺人鬼のキャラクターであったらといったメタファーが劇中で描かれる。つまり、狂気は伝染し、宿主を変えていくということだ。(小説版も読むと分かりやすい)

更に、主人公山城が模写した両角の殺人がいつしか創作に変わり、両角が模写する立場に逆転していく関係性も斬新で面白い。そして、演出も見事で、あえて殺害シーンを見せず、観賞者に連想させることで殺人鬼両角に対する恐怖心を嫌でも抱かせる。終盤の山城に対する希望と絶望の選択肢をあえて残して幕を閉じる意味深いラストも最高だ!

余談だが今作の映画「キャラクター」は小説版とマンガ版が販売されており、どれも結末が違う内容になっている。