イマジンカイザー

BLUE/ブルーのイマジンカイザーのレビュー・感想・評価

BLUE/ブルー(2021年製作の映画)
4.5
ロッキーみたいな派手な逆転や、劇的ななにがあるわけじゃないけれど、真摯にボクシングに挑み、負けて、敗けて、負け続けても「すき」な気持ちを曲げない不器用で愛おしい漢の映画。伝聞から観に来たのですが、うわさ通りの面白さにニッコリ。
全体を通してそれぞれの登場人物がぶつける生々しい感情や、劇的な成功があるわけじゃないが、誰もが真摯に取り組むが故に熱の入るボクシングシーン。たいてい、ボクシング映画って練習シーンに盛り上がりのヤマがあることが多いのですが、それも含めてのジャンプアップで試合そのものがアガるアガる。久しぶりに見入ってしまって言葉がなかった。

負けっぱなしだけど物腰はいつも柔らかで、後輩に真摯にボクシングを教え、導いていく松山ケンイチのキャラクターが本当に好み。断片的に語られるきっかけや好きな子への気持ち、実際力量が足りていないことへのつらさも分かっているけれど、それでも生き方を変えられない不器用さには色々クるものがあります。

松山の後輩キャラの柄本も、浮ついた気持ちで乗り込んで来て実際ナメ腐っているものの、真摯な指導と暖かな言葉で徐々に楽しさに目覚め、本気でプロを目指す様への転回が面白い。イキりにイキった今の若い子って感じだけど、嫌味なところと真面目な部分の塩梅がうまく、全体でみてもストレスを感じないのは良いですね。

そして東出。どこまで狙ったかどうかわかりませんが、リアルの彼の状況と重なる部分が役どころに多くて、序盤はだいぶにゃっとしつつ視ていたのですが、一番ボクサーらしいボクサーやってて終盤はもう笑うに笑えない。改めて、パンチドランカーのおそろしさを垣間見ましたわ。

どんなに負けっぱなしで、人から馬鹿にされようとも、スキをきちんと貫いた故の終盤の試合シーンはアツいですし、最後の松山ケンイチの姿にはほろり。
夢に向かうひたむきさと、夢を追ったがゆえの引きずりとを同居させた、めちゃくちゃ好きなボクシング映画でございました。