あんじょーら

BLUE/ブルーのあんじょーらのレビュー・感想・評価

BLUE/ブルー(2021年製作の映画)
2.7
2021年公開後追い作品 その2


吉田恵輔監督作品でもう少し評価が上がっていいと思うのは「さんかく」だと思っていて、よく言われるスコセッシ監督でデ・ニーロ主演の「タクシー・ドライバー」を男性性の映画それもアメリカにおける男性性の映画だと言うのであれば、日本の男性性の映画と言えば私には「さんかく」だと思っていて、結構重要な作品だと思っています。その後ある程度は追いかけて観ているつもりの映画監督さんです。その最新作はボクシングを扱った映画でした。


瓜田(松山ケンイチ)はプロボクサーではありますが、負けが続いています。同じジム所属には天才肌の小川(東出昌大)が居て・・・というのが冒頭です。


ここに、不純な動機でボクシングジムに入ってくる楢崎(柄本時生)が居て、観客はこの楢崎視点で物語を観る感じだと思います。


監督は中学生時代から30年以上ボクシングに関わっていらっしゃっていて、この企画も相当な期間温めていたようです。ですので、ボクシングについても、そしてある種の青春モノとしてもとても上手いと感じました。


才能や努力について考えさせられますし、私の世代ですと、様々なボクシング作品に触れて育ってきたわけです。


漫画で言えば「あしたのジョー」「リングにかけろ」「がんばれ元気」「はじめの一歩」「ZERO」なんかを読んでいますけれど、やはり衝撃的だったのは中学生の時に読んだ「がんばれ元気」です。めちゃくちゃ昭和な話で恐縮なんですけれど、ボクシングと言えば私には元気くんなんですね。


映画で言うと「ロッキー」は外せないでしょうし「チャンプ」もイイですし「レイジング・ブル」も古典的名作でしょう。


今作はそのどれとも違う作品に仕上がっていると思います。ボクシングにおいて強さ、勝つ事に意味のある試合や競技ですから、当然です。が、しかし、努力が必ず実を結ぶ訳ではなく、またチャンピオンになれる人はごくごく少数の人間だけです。しかし、チャンピオンになった人だけがボクシングという競技を知り得た人とは言えないでしょう、様々な接し方がある。


どちらかと言えば、普通の人々を描いたボクシング映画です。


主演の松山ケンイチさん、あまり動くところは見た事が無かった俳優ですけれど、説得力がありましたし、ボクシングをする姿は、私がボクシングに詳しくないせいもあると思いますが、本物に見えました、ちゃんと。腕の動きだけでなく、足運びも、です。そして内に秘めた熱さがある男をcoolに熱演しています。


相対する小川を東出さんが演じていまして、この方も動いているところはあまり見た事が無いのですが、どちらかというと、ボクサーの動きの本物っぽさは松山さんの方がより良く見えるのに、そんなことよりも、ああ、この人は天才肌なんだな、という演技が素晴らしかったです。


吉田恵輔監督作品の中ではかなり上に来る作品だと思いました。ボクシングジムの匂いを感じられる映画。


ボクシングに興味のある人に、そしてボクシングに興味は無いひとでも努力する才能、もしくは本当に好きな事との関係性とは何か?に興味のある方に、オススメ致します。