IrateBeggar

BLUE/ブルーのIrateBeggarのレビュー・感想・評価

BLUE/ブルー(2021年製作の映画)
5.0
ウリボーはヘボ選手だが、明らかに人徳知能性格全て兼ね備えた天才指導者であり早くそっちに方向転換すればいいのに、選手であることにこだわる。小川はタイトルを獲って潔くやめればいいのに(というかやめなきゃ廃人になるのに)病から目を逸らし、消費期限の過ぎた肉体を引きずって結局戻ってしまう。
どちらも諦めの悪いボクシングバカ。特に小川の行く末は破滅しか見えず、我慢強い彼女もいよいよ付き合い切れないだろうということは、新婚でありながら、終盤に近づくにつれ影を落とす2人の関係からも分かる。
楢崎はそんなボクシングバカ達の背中を見て育つ。彼はウリボーの弟子であり、小川の弟弟子。多分、この先化けるのだろう。散々な師匠と兄弟子に対し、唯一明るい予感のある楢崎は、健康体だが勝てなかったウリボーと、才能はあるがボロボロになった小川の敵討ちに挑むのだ。

諦めたくない。負けを認めたくない。そんな悪あがきは賢くないかもしれないが、かっこいい。ウリボーが、症状が重くなる小川に辞めるよう説得してくれと千佳に頼まれ断る場面があるが、もし同じ立場だったら、自分も辞めろとはとても言えない。擦り切れるまで、やればいいと思う。お互いダウンするまでやり切ろう。


※追記
小川の千佳に対するDV秒読み感と、先輩負けてるのにいらないバスタオルの下り、ただ単にそういう奴だからと思っていたが、パンチドランカーの症状として易攻撃性・性的羞恥心の低下・幼稚があるようで、リアルボクサーな監督だけあって落とし込み方が自然だなと驚いた。
松ケンが小川を不幸で可哀想と評するのも納得。老子曰く、一番いい木から切り倒され、曲がった木が何千年も残るそうだ。
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