三四郎

荒城の月の三四郎のレビュー・感想・評価

荒城の月(1937年製作の映画)
4.3
何故かどこか寂しくなるような悲しくなるような切ないような…それでいて心温まり心潤むそんな映画だ。

1937年、この作品はパリ万博に送られ、その年パリ、ヴェネツィア、ベルリンで上映されたようだ。万国博に送る際の候補作品は3つに絞られており、それは溝口の「祇園の姉妹」小津の「一人息子」佐々木の「荒城の月」で、結局「荒城の月」が選ばれたのである。フィクションにしろ、滝廉太郎と彼の代表作、つまり日本の誇りを題材にしていたからだろうか。万博に出品するのだから、やはり国家の威信、いや政府の思惑が働いたことは確かだ。まさか芸妓姉妹の物語を胸張って国家代表として出すわけにはいかぬし、「一人息子」は内容的にも深く良いような気がするが、欧米にもこの手の作品はあるだろうし、やはり前述したように「日本らしさ」を持った作品として世界に堂々と出すなら「荒城の月」が一番無難だったのであろう。藝術的観点、批評家から言わせるとキネマ旬報ベストテンに入っていない映画なので口惜しかったかもしれぬ。

「東京なんてあなたの思ってるようないいとこじゃありませんよ」こうゆう科白は感慨深い。
さて、37分ごろの映像が気になる。三枝子の目の動きか?歩くスピードか?列車にでも乗っているのかと思うくらい滑らかで速い。これはちょいと速すぎるなぁ、たとえ目の動き、歩くスピードではないにしろ。この速さは何を表現したかったのだろう。もう少しゆっくりの方が良かった。
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