サカイピロシネツキ

SLEEP マックス・リヒターからの招待状のサカイピロシネツキのレビュー・感想・評価

3.8
生きとし生けるものが毎日繰り返す
眠りと目覚めについての考察と示唆に富んだマックス・リヒターによる8時間半近い大作「SLEEP」の演奏会。
(リヒターはドゥニ・ヴィルヌーブ監督作『メッセージ』で使用された『On The Nature Of Daylight』の作曲家)



全く見知らぬ人たちと「眠る」という極めてパーソナルな体験を共有する美しい夜と、その旅を終えて迎える静かな朝。


屋外での公演はまるで夜の大聖堂での厳かなミサのよう。反復する低周波のリズムにより、穏やかな海や地球と一体化したかのような瞑想状態に導かれ、
まるで胎内で眠っているようでもあり、無重力空間で覚醒しているようでもある。





映像作品としては
観客たちにもスマホをオフにさせ
日常から敢えて断絶するプロジェクトなのだから
リヒター夫妻のプライベートな惚気話や金銭的な苦労話、8時間続けて演奏するミュージシャンの肉体的なしんどさなど、
ドキュメンタリー的な俗っぽい情報も
どうせなら足し算しないで欲しかったところ。
芸術は芸術として、そのまま提示してくれればそれだけで素晴らしいのに。