こそばす

トキワ荘の青春 デジタルリマスター版のこそばすのレビュー・感想・評価

3.8
まったく知らない映画だったが、子どもの頃に藤子不二雄の「まんが道」を愛読していた事があったので観賞した。
いや、これは名作でした。25年前の公開当時、若造の自分がこの映画を観てもそこまで感動しなかったかもしれない。
中年の今だからこそ、感じるものがあった。

まんが道は藤子不二雄が主人公の話だが、この映画は、寺田ヒロオを主人公にした事によって、時代の流れについていけなくなる漫画家の苦悩がさりげなく描かれている。
まんが道は漫画家として成功する話なので正反対だ。

話は淡々と進むのだが、トキワ荘の撮り方が本当に良かった。大袈裟な演技や演出がまったく無いが、役者も品のある演技で最高である。昭和の名作日本映画の趣きを感じた。

最後の寺田ヒロオと野球少年との何気ないシーン。野球少年の背番号は0。
これは寺田ヒロオに対する監督のメッセージだと気づいた時、思わず落涙する。
実は寺田ヒロオは、この映画が公開される4年前に逝去していた。
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