wadeHeart

映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園のwadeHeartのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

総評 思った以上にちゃんとミステリー&いい意味でいつものクレヨンしんちゃん

今年の映画は出来がいいという話を聞いて見に行ったが確かにしっかりと楽しめる良い作品でした。
驚いたのがちゃんとミステリーしているところ。どうしても子供向け作品の謎となると、キャラクター配置や謎解きについて誰がどう考えてもそうだろみたいな作品が多い。これは決して悪いことではないと思うのだが、本作はミステリーをお題目として掲げているだけあってなかなか謎についてもしっかりと納得ができる結論を出してくれていたように思う。
また、謎解きという要素が話の興味を牽引してくれていて、途中も退屈しない映画にもなっていた。

映画のキャラクター達についても魅力的に描かれていた。生徒会長のチシオは終盤まで絶妙に怪しい立ち位置を見せるミスリード役を果たす。そして後半では、早く走ると変顔になるというコンプレックスによりランナーの夢を諦めてしまった少女が、しんのすけ達が頑張る姿を見て、もう一度走り始めるという役割を担う。
王道な展開ではあるが見ていて気持ちが良かったし、作画的にはしっかりギャグの文脈での変な顔の彼女だが頑張れという気持ちになる。
番長やサスガ、アゲハ、ろろ、すみこなど他のキャラクターについても容疑者役をこなしながら魅力的なキャラクターとして描かれていた。細かいところでは学園長もいい人間とは言えないがそこまで不快感もなくて良かったように思う。

また、本編キャラでは風間くんの「いつかは、このままみんな一緒では居られなくなる」という悩みがクローズアップされている。
これは原作を見ている人間からしても納得感のある悩みだし、しんのすけ達がそれを知って改めてスーパーエリート風間さんに立ち向かう決意を固めるのは熱い展開だった。
最後の最後、オツムンが壊れたあとのしんのすけとのマラソンシーンのやりとりは心に来るものがあった。

総じて、目立った粗もなくクレヨンしんちゃんの映画に求めているちょっとおバカでちゃんと感動できる作品でありながら、ミステリーという新要素でマンネリにも一矢報いたといういい映画だった。

クレヨンしんちゃんの映画というと、どうしても過去の名作と比較されがちになってしまう。
視聴者のノスタルジーに直接訴えかける「オトナ帝国」、戦争の不条理を子供向けアニメでするという「アッパレ戦国大合戦」、本編キャラであるひろしの擬似的な死を使った「ロボとーちゃん」などなど映画ならではの要素を使った作品に比べるとこの作品は少し薄味かもしれないが、そういった飛び道具的な要素を抑えた上でしっかりとキャラクターを描きながら楽しい映画となっている本作も肩を並べるような名作だと思う。
wadeHeart

wadeHeart