グッチ家を取り上げているが、「グッチ家の栄華、キラキラ!ギラギラ!」という映画かというと全く異なる。
『ハウス・オブ・グッチ』は、「The風刺エンタメ」だった。
風刺を「権力者(庶民とは遠い世界にいる人)の欠陥、弱い部分を批評、そしる/笑うこと。そしてやりきれない感情を昇華させること。」だとすると、本作はまさにその類の作品だった。
グッチ家の人が、あからさまに「愚か」に描かれているのだ。そりゃグッチ家関係者も怒る。
ただ、その振り切れっぷりが激しいので、自分も含めたパンピー=鑑賞者は、本作を一級のエンタメ作品として楽しむことができる。
グッチ家の声などものともせずに作品制作を実現できたのは、御年84歳、怖いものなしのリドリー・スコットが監督をしたからに他ならない。
またグッチ家の人々を一流の愚かな人々に見せることを、俳優陣が実現している。
・時がたつに連れて態度と身につけている宝石が大きくなる傲慢なパトリツィアを全身で体現したガガ様
・グッチ家ビジネスから距離を置こうとしたり、逆に拡大しようとしたり、揺れ動く坊ちゃまマウリツィオ・グッチを独特の造形と無表情さで表現したアダム・ドライバー
・Theファミリービジネスマンの誇りと奢り、その成功と失敗をしたアルド・グッチ、彼を演じたのはさすがの年の功アル・パチーノ様
・そして奇人パオロ・グッチ…彼の役を自ら志願し特殊メイクまでして出演したジャレッド・レトは、もはや怖い笑
少し前に公開していた同じくリドリー・スコット監督作品の『最後の決闘裁判』とは全く異なる作風。
映画監督人生を締めにかからずに、どんどん新しい切り口の作品を作って欲しい。