こうみ大夫

ハウス・オブ・グッチのこうみ大夫のレビュー・感想・評価

ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)
3.6
映画全体に渡って軽薄だ。そもそも一つ一つのシーケンスが弱い。なぜなら点と点で繋いでおり、間の過程・感情の変化というものが一切フォーカスされていないからだ。その代わり映画全体を通して音楽は最高に良い。編集からして明らかだがこの映画は音楽がリードしている。何故か。よく分からないがリドリースコットの、今回はオペラだ!ミュージカルだ!とでも言いたい強い意志を感じる。だいたいグッチ家唯一の生き残り、娘に最後までフューチャーしないなんておったまげる。そんな薄情な演出!だがそのお陰なのか、一切誰にも寄りそえる感情は無い。全員悪人ばりに、みんな糞野郎しか出てこない。
レディーガガに関しては、お前だけリハーサルやってないのか?というくらい演技が浮いている。なにせ他の役者が強すぎる。でも最後、殺人を指示する場面で確信になったが、全ては演出なのだと思う。役者でないレディーガガ」にしか、「グッチ家でないパトリツィア」という役は出来ないのだ。グッチ家にあるグッチ家という風格=即反射的な芝居、であり、グッチ家でない人々の軽薄さ=キャラ付け的なドラマ風芝居、という構図が見事に成功してるのだ。キャスティングの時点でそれが完成していた。だから殺人を指示する場面であんなにファニーに描ける。まるで大学生が初めて撮るクライムフィルムかのように、軽薄で、嘘くさい。でもそこが良い。
面白くないけどこの演出は上手いと思った。あとアル・パチーノはやっぱ最高だね。デニーロがキムタクならアル・パチーノは香川照之くらいいつも違う顔を出してくるよ。一番好きなのは自分の人生が終わったと分かった時に出た叫び方。
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