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ハウス・オブ・グッチのツクヨミのレビュー・感想・評価

ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)
4.1
リドリー・スコット監督が描くグッチ家はゴッドファーザーだった。
1970年代後半グッチ家の長男マウリツィオはパトリツィアという女性と出会う。それはグッチ家の栄枯盛衰の始まりだった…
リドリー・スコット監督作品。今作はファッションブランドグッチの内面を描いた実話ということで、何も情報を入れず観賞したが監督の編集力の賜物か長い上映時間でも全く飽きずに駆け抜けた映画体験になった。グッチ家の経営を巡った栄枯盛衰を描く、それはまさにマリオ・プーゾ原作"ゴッドファーザー"シリーズを想起させる内容が全開。グッチ家の経営から手を引いた長男マウリツィオが父の死により経営に携わっていく展開は"ゴッドファーザーPartⅠ"、後半マウリツィオが他家族を陥れ株を総取りし独裁をしく展開は"ゴッドファーザーPart2"を思い出す。アル・パチーノが出演している辺りリドリー・スコット監督が"ゴッドファーザー"を意識した可能性は高いと感じた。まさに本作はファッション業界のゴッドファーザー。
そして今作は1970年代から90年代を描く話なので音楽に関しても当時の曲を選曲していてオシャレ感が心地良い。ファッション業界の内容というのも相まってオシャレに見えるが、本質はグッチ家を巡るドロドロした人間模様に冷ややかささえ感じた。オシャレさと冷ややかさ二つの要素を抱えた映画でもあるのは間違いないだろう。
また個人的に中盤でパオロが発狂するのと車のクラクションをディゾルブさせたカット割は美しく、小津安二郎監督作品"風の中の牝鷄"の女性の発狂とラジオのジャズをディゾルブさせたものを想起させる。こういうカット繋ぎはなかなか珍しいのですごくテンション上がった。
全体に長尺なのに時間を感じさせず作品にのめり込めた秀作だった。リドリー・スコット監督の編集力と力強さは流石。
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