くろさわ

竜とそばかすの姫のくろさわのレビュー・感想・評価

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
4.0
細田守監督の集大成のような作品。


物語は・・
母親を亡くして以来、殻にこもる性格になり、歌うことができなくなった女子高生のすず。ある日、友人から勧められたSNSの仮想世界『U』にて自分の分身『Bell』を作ると、Uで歌った歌が注目して大人気になる。Uの世界で注目される存在になった時に、孤独に闇を抱えた「竜」と出会う話。


見ながら感じていたことは、細田守監督の集大成のような作品だった。仮想世界、甘酸っぱい恋愛、親子愛などの要素から過去作のシーンをどこか思い出す部分がいくつかあった。それだけではなく、今回は歌や音楽を軸として取り入れられており、今まで以上にパワーアップした細田守映画の誕生を感じた。

細田守監督がインタビューで、もともと「美女と野獣」が好きでミュージカル映画を作りたいと答えているように、どこか「美女と野獣」に影響受けていそうなシーンが多かった。もはや、名前もベルだしね。細田守×美女と野獣といっても過言ではなさそう。


まず、冒頭を五分見た瞬間に、これは映画館で見てよかったと感動するくらい、魅力的なオープニングだった。
いきなり仮想世界に主人公の分身Bellが歌うんだけど、仮想世界のライブ感に圧倒された。

今回の主人公のすず/Bell役を演じた中村佳穂さんが本当に素晴らしかった。中村佳穂さんでなくてはならなかった、いつも歌手で歌っている癖のある曲調とはまた違うんやけど、透き通った声に感動させられた。


ストーリーに関しては、地味な人がネット上でバズっちゃったっよという、現実に近いテーマとなっている。素性を見せないのが、ネットの魅力であるのに、注目されると、現実ではどんな人なのかって突き止めようとするの所や、すぐに炎上するグループラインかどネットの悪い部分も見せながらも、悪いものじゃないよっていう細田守監督見せ方が優しかったな。

後半ぎゅっと詰められている感じがしたけど、Uを通して成長するすずの姿、特にお父さんとのメールのやりとりは突き刺さって、うるっとしちゃった。

カンヌで上映後、14分間もスタンディングオーベーションが続いた作品。圧倒的な仮想世界の映像美、そして中村佳穂さんの歌声を味わうだけでも、映画館で見ることをお勧めします。

見終わった後に今までの細田守作品も見返したくなった。