紅茶

竜とそばかすの姫の紅茶のレビュー・感想・評価

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
4.0
細田守作品。シネマスコープサイズで魅せる仁淀川や沈下橋を背景に、被写体であるすずをカメラで追う・追わない・追いかける行為に思わず感嘆してしまう。SNSの功罪という以前から交わされた議論を踏まえ、現実と仮想世界を行き来する現代人のアイデンティティの所在がどこにあるのか、そこに意識が向いているのが伝わる。アンベイル(unveil)が象徴するような匿名性と記名性の狭間に渦巻く問題やソーシャル・ジャスティス・ウォリアーズの名ばかりの社会正義など、SNSが普及し過ぎた世界を映し、SNS黎明期に撮られた監督作の映画からの更新ぶりに、この10数年での変化の大きさを思い知る。
何はともあれ中村佳穂の声に終始魅了され続けた。ボソボソとした独り言のような断片的な言葉が紡ぐ歌というあり方は、中村佳穂の歌唱スタイルに合致する。
おそらく多くの方が指摘しているであろう終盤の安易な作劇には目を背け難いが、絶望の展開をなんとしてでも避けねばならぬ監督の意地が感じられる。
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