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竜とそばかすの姫のdjsouchouのネタバレレビュー・内容・結末

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
1.5

このレビューはネタバレを含みます

大枠として「サマーウォーズ」の精神的続編であり実際舞台設定もそれを踏襲してる箇所が散見されました。
具体的には「メタバース(今作では『U』と呼ばれる)と現実世界を往復し双方に影響を与える」点ですが今回流石に全てのアバターがロックアウトされクラッカーによって仕掛けられたRSA暗号をかわいい男子高生が計算力で解いたり自立式AIが軍事衛星を降下させたり…みたいな展開はありません。

その代わり、高知在住の地味子がお歌で殴ります。ただし彼女は当初人前で歌えない引っ込み思案です。そう、基本的には現実の学生生活や日常で全く冴えない彼女が「U」に生まれ落ちた「Belle」というバーチャル歌手として活躍する地味子こと鈴の成長譚なのです。

物語では早い段階で鈴の母親が彼女が幼い頃に溺死してしまった事が明示され、その結果残された父親とも家庭内別居みたいな感じでほぼ口を利かなくなってしまいます。
それまでは親子で仲良くGarageBandで曲作ってたのに(因みにこの作品で出てくるDAWは一貫してiOS/macOS用のGarageBandです。監督の趣味でしょうか?)。

鬱々と過ごしていた彼女を見かねて友人のヒロちゃん(細田守作品最高の眼鏡っ娘!)に「U」を教えてもらいアカウントを作成し本格的に話が動きます。
妬みやゴシップに晒されつつも歌唱力のみで「U」でのPROPSを上げる鈴/Belleの前に突如現れる「竜」とそれを追う追手の自警団っぽい正義狂人(タイバニみたくスポンサーが付いてる)。当然彼にも中の人はいるのですが、後半で正体が明らかになった途端に思わず吹き出しそうになりました。理由は後述します。

何か良くわかんねぇ自警団っぽい正義狂人達に目を付けられつつも「竜」との逢瀬を繰り返す鈴/Belle。因みに彼女も一度正義狂人のリーダーに囚われ「竜の居場所を吐かんと『外道照身霊波光線(忘れたので仮名)』でわれの素性を『U』全てに全公開させるきな😡(大意)」と脅してきますが竜の配下のAI妖精たちに助けられます。このAI妖精たち、何気に人間入りアバターより戦闘力高いです。

その後紆余曲折あって「竜」の中の人の中学生(「おおかみこどもの雨と雪」の雨くんっぽい陰のある子)とその弟(視線が定まらない業病を患ってるっぽい子)の存在を知る鈴/Belle。コンタクトを取るもどうやら兄弟揃って父親に折檻 a.k.a. 虐待を受けネットを介してSOSを発し来る人全てに空疎な言葉しか投げかけられておらず人間不信に。
だが、どうしても助けたいと願う鈴に幼馴染みのしのぶから投げかけられた言葉は「アバター捨てて『U』でいっちょカマしてこい(大意)」といったヒロちゃん憤死ものの提案。

それを呑んで正義狂人の「外道照身霊波光線」をわざと浴び、鈴の姿で歌い上げ「竜」の中の人の信頼を勝ち取ることに成功。その場に居合わせた大人たちと兄弟救出作戦を立てるも調査の結果神奈川県某所に在住する事が判明し時間的に高知発の飛行機も出てないので、鈴単身で夜行バスに乗り凸を試みる事に。
果たして鈴の、「竜」の中の人兄弟の運命は!?

…ざっと、こんな話でした。

まず、細田守監督作品中最も暴力表現含むセンシティブな表現が多い様に感じました(嘔吐とか)。
あと意図的に描いてるとは思いますが、自警団面した正義狂人含む「U」民の態度が現実の「インターネット民」の戯画化なのでしょうが、総じて悪め。
それと、ぶっちゃけ「外道照身霊波光線」浴びて鈴の姿で歌うシーンが冗長で寝落ちしそうになりました。
てか、そもそも舞台を高知県にする必然性、距離感の演出以外にありますかね? 物語の大半はメタバース上で展開されてるし、単なる尺稼ぎじゃね?

キャラ造形について。
鈴ちゃん、もしかして細田守監督の投影(女体化?)じゃね? お相手が何とも都合のいい事に「ケモノ兼ショタ」ですし。
「未来のミライ」よりかは比較的分かりやすくなってますが、そう来ましたか…と吹き出しそうになりました。
あと、これはまあまあ嫌な見方ですが、本作、細田守監督作品史上最も大人がぞんざいに描かれてる気がします(鈴の母親の死因とかコーラス部のおばちゃん達とか「竜」の中の人兄弟の親とか)。舞台装置として魅力的に描けなければ最初から出さなきゃいいのに。

色々書いて来ましたが腑に落ちる箇所よりどうにもスッキリしない箇所が多く、だがそれを確認する為にヒロちゃんを意識しつつ何度も観たいか? と聞かれると…ちょっとそこまでして、みたいな感じに。

何か煮え切らない感想になりましたが以上です、編集長。
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